教育現場を変革する「新幹線学」とは何なのか 子供たちが目を輝かせ、大学で導入の動きも
新幹線開業はプラスの側面ばかりではない。地元自治体による建設費の一部負担、並行在来線の経営分離による運賃値上げ、運行ダイヤ見直しなどによる利便性改悪といったマイナスの側面も少なくないことが、利害の構図を複雑にしている。「個別のテーマで検証を試みれば全体像が見えなくなり、全体像を見ようと試みれば、際限なくテーマが浮かび上がるというジレンマ」(櫛引教授)がある。
そこで、新幹線学という「くくり」を設けて、包括的・網羅的な検証や提言を行いたいというのが櫛引教授の狙いである。愛知大学三遠南信地域連携研究センターの助成事業に採択され、8月には青森市で実務者が集まる準備会合を設定しているほか、11月には函館市で公開フォーラムを開く構想もある。
経済学から地理学まで横断的な知識が必要
四国4県や大分県など新幹線を待望する地域では、新幹線の開業が地域にどれくらいの恩恵をもたらすかを検証した詳細な報告書を作成している。しかし、それぞれを報告書はあくまで地元目線で書かれたものであり、新幹線誘致で競合する地域間の比較といった第三者的な視点は物足りない。こうした報告書のベースに「新幹線学」という共通の土台があれば、報告書を作成する側も読む側も新幹線が地域にどのような影響を与えるかという理解がより容易になるはずだ。
新幹線学に含まれる研究領域は、大きくみれば経済学、政治学、法学といった社会科学だけでなく、環境学、地理学、都市工学など多岐にわたる。ただし、現時点での「新幹線学」はあくまでも実務的な検討をイメージしている段階だ。
それでも、将来的に、「新幹線学」という授業が大学で行われるようになれば、新幹線という切り口が大学生のこうした横断的な学びへの意欲を高めるようになるかもしれない。それは大学教育だけでなく日本経済にとっても間違いなくプラスになる。
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