安倍政権を揺さぶる豪雨災害対策の不手際 国会会期末の攻防と自民総裁「3選」にも影響
特にインターネットなどで炎上したのが、首相の5日夜の懇親会出席だった。豪雨災害が刻々と迫る中、自民党の中堅・若手議員らが官邸近くの衆院赤坂議員宿舎で開いた「赤坂自民亭」と称する懇親会には、首相や竹下亘総務会長、岸田文雄政調会長らが出席、首相や岸田氏の地元の日本酒などを酌み交わして気勢をあげた。
しかも、約50人もの自民党議員が出席したこの会合の模様を、首相とともに参加した西村康稔内閣官房副長官が、メンバーがVサインなどでご機嫌な首相を囲む集合写真をツイッターに投稿し「笑笑 いいなあ自民党」などと書き込んだからだ。西村氏は政府と与党の連絡役でもあり、ネット上では「この大変な時に何をやっているんだ」など批判の書き込みが殺到することになった。
このため 会合の元締め役でもあった竹下氏は9日の記者会見で、「どのような非難もお受けする。これだけすごい災害になるという予想は持っていなかった」と謝罪と釈明に追われた。併せて、与党の公明党からも「官邸は緩んでいる」との批判が相次ぎ、「首相らのお寒い危機対応」(閣僚経験者)が非難の的となったことで、9月の自民党総裁選への影響を懸念する声も広がった。
一方、野党は9日、国会審議より災害対応を優先するよう政府に申し入れるなど、会期末の法案処理も絡めた与野党の駆け引きが活発化した。立憲民主党の枝野幸男代表や自由党の小沢一郎代表など野党5党の代表は、災害対応に全力で取り組むよう政府に申し入れることで、カジノ実施法案などの重要法案の会期内成立を阻止することを狙っている。災害対応の中軸を担う石井啓一国土交通相は、カジノ法案も所管しているからだ。立憲民主の辻元清美国対委員長は9日、「カジノの議論をしている場合ではない」と口を尖らせた。
カジノ法案と定数増法案の成立阻止狙う野党
野党陣営がカジノ法案とともに成立阻止を狙うのが参院の一票の格差是正を目的に自民党が提案した「定数6増」の公職選挙法改正案だ。同法案を審議する参院政治倫理確立・選挙制度特別委員会は9日午後、各党が提出した格差是正のための公職選挙法改正案のうち、全国を11ブロックの大選挙区に統合する公明党案を先行して採決して否決した。自民党は11日にも同党の改正案を参院本会議で可決して衆院に送付することで週内決着を狙う構えだが、衆参両院での野党側の抵抗は必至で、与野党対立による国会混乱は避けられそうもない。
そもそも、最新の各メデイアの世論調査では、カジノ法案や参院定数増法案の今国会成立について、反対が賛成を大きく上回る数字が目立つ。それだけに、10日の参院内閣委員会でのカジノ法案の審議でも、野党側は「どうしてそんなに審議を急ぐのか。まずは災害対応に専念すべきだ」と口をそろえて石井国土交通相らを攻め立てた。
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