新興国は、来年こそ正念場か コマツの業績悪化で不安が広がる

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10月29日、新興国経済への不安が再び高まってきている。大手建機メーカーのコマツがアジアなどでの販売不調を理由に一転減益予想となったためだ。写真は1月、都内で撮影(2013年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 29日 ロイター] -新興国経済への不安が再び高まってきている。大手建機メーカーのコマツ<6301.T>がアジアなどでの販売不調を理由に一転減益予想となったためだ。

新興国では、中長期的な成長期待が依然として強い一方、インフレや内需過熱で金融・財政とも引き締め政策を余儀なくされている国も多い。来年、中国が成長率目標を引き下げれば一段と経済環境が厳しくなる可能性がある、と警戒されている。

<予想以上の業績悪化>

米重機大手キャタピラーが23日に発表した減収減益決算を受けて、市場は新興国ビジネスを展開する企業の業績悪化をそれなりに織り込んでいた。関連銘柄の株価下落もあり、市場にはある程度「耐性」ができていたと思われていたが、にもかかわらず、コマツの決算が大きく嫌気されたのは、内容が予想以上に悪かったためだ。

コマツによると、2014年3月期連結営業利益予想は従来の3050億円から2100億円と前年比44%増益から一転1%の減益となり、大幅な見通し引き下げとなった。想定為替レートを1ドル95円から96.5円と円安方向に修正したにもかかわらず、業績が大幅下方修正されたため、「円安効果で中間決算は好業績という全体シナリオにも不安が強まった」(楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏)という。

コマツの株価は8%下落。同業の日立建機<6305.T>は、9月中間期の連結営業利益が前年比19.6%増の250億円と堅調だったものの、コマツの連想から事業環境の悪化が懸念され、5%超の株価下落となった。29日の東京株式市場では日産自動車<7201.T>やファナック<6954.T>など新興国で事業を展開する企業は全般的にさえない動きとなっており、株価の上値を押さえる要因になっている。

コマツの業績悪化は、利益率の高い鉱山機械の販売がインドネシア、中南米、オセアニアなど一部新興国で落ち込んだことが要因だ。背景には、鉱山投資の一巡に加え、資源価格の下落や石炭需要の低下がある。新興国の多くは資源産業への依存度が高く、厳しい経済運営が続く可能性を示唆するとして警戒感が強まっている。

<インフレで引き締め余儀なく>

年央以降、新興国経済が悪化したのは、5月22日にバーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長が量的緩和第3弾(QE3)の縮小を示唆し、投資家が新興国から資金を巻き戻したためだ。当初はすぐにも行われるとの憶測が広がったテーパリング(量的緩和縮小)は現時点では来年以降になると見られている。新興国には過剰流動性が回帰する可能性もあるが、「ホットマネー」の再流入はインフレという別の問題を悪化させる。

インドネシアは、コマツの建機販売が落ち込んだ国の1つだ。同国は、インフレや内需の過熱を抑えるために金融や財政で引き締め政策を採っており、それが需要の減退につながっている。インドネシア中銀は今月8日、政策金利を据え置いたが、アナリストからは来年初頭までに政策金利を再び引き上げるとの予想が多い。ブラジルやインドなどもインフレで苦しんでおり、景気が減速するなかでも、金融引き締めを余儀なくされている。

一方、中国の成長率減速も、新興国にとっては大きな重しとなる可能性がある。中国担当エコノミストの間では、今年の成長率目標7.5%は来年に7.0%へ引き下げられるとの見方が多い。新政権2年目となり、構造改革に拍車をかけやすくなるためだ。「新興国は今年、中国経済に振り回されたが、来年の方が引き締め度が強く、警戒が必要だ」(外資系証券)という。

国際通貨基金(IMF)は今月8日、2013年の世界経済の成長率予想を前回7月時点の3.1%から、2009年以来の低い伸びとなる2.9%に引き下げた。大半の先進国で成長の加速が見込まれるものの、新興国における成長鈍化を補うには不十分とし、2014年についても、前回の3.8%から3.6%に下方修正した。

IMFは、2014年の新興国・途上国の成長率を5.1%とし、13年の4.5%から加速すると予想しているが、中国の14年成長率予想を7.3%としており、甘めの前提となっている。

新興国の成長期待が消えたわけではないが、短期的な景気減速への警戒は強くなっている。BNPパリバ証券・債券調査部EMKストラテジストの前島英彦氏は「インドネシアの生産人口は2055年まで拡大する。同国の国債の3割を非居住者が保有しているのは、同国の成長期待が高いからに他ならない。長期資金は簡単に逃げないだろうが、短期資金の出入りが激しくなる中で、経済の振幅も大きくなりそうだ」との見方を示している。

(伊賀 大記 編集:北松 克朗)

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