フジメディアHD総会、出席株主と埋まらぬ溝 修正動議が連発、経営課題への質問は皆無
その後も幾度となく動議が出された。「配当を40円ではなく50円に」「代表取締役会長以下、取締役の選任は行わず、名簿から全員削除すること」「東京電力の社長だった南直哉氏を監査役に再任すべきでない」「修正動議を原案と一括採決し、監査役がほとんど寝ていることも注意できない議長に対する不信任動議」「フジ社内で日枝氏が代表と呼ばれていると聞く。代表でない人物を、代表を呼ばないように決議すべき」「休憩をとり、バイキングを見学させてほしい」などといったものだ。決議事項と関係のない提案も多かった。
フジテレビについては、番組の質についての質問が寄せられた。「昨年も指摘したのに、なぜ報道でミスが多発しているのか」との質問に対して、フジテレビで報道・情報制作を統括する岸本一朗取締役は「ミスが続発したことについては申し訳ない。研修会議を開いたり、番組ごとに危機管理担当をおいてチェックし、制作フローを見直している。今後も再発防止に努めていく」などと回答した。
「大人が見るのに耐えられる番組を」
主婦で、フジテレビをよく見ているという女性が質問に立つと、「大相撲の内紛や日大アメフト部問題、紀州のドン・ファンなど、なぜいつまで経ってもスカスカの内容を放送し続けるのか。サッカーも小柳ルミ子氏を出演させるなど、なぜバラエティにしてしまうのか。低俗な番組ではなく、大人が見るのに耐えられるものを作ってほしい」と厳しく指摘した。
そのほか、「AKB選抜総選挙の視聴率が毎年下がっている。仕切り直して質を上げてほしい」「視聴者の半分は女性や子供。極楽とんぼの山本圭壱氏や狩野英孝氏など、性犯罪などの不祥事を起こしたタレントを出すべきではない」「株主を番組にキャスティングしてほしい」「放送免許を返上し、不動産事業に特化したほうが株価は上がる。カジノ事業をやればグループはさらに栄える」など、さまざまな意見が挙がった。フジテレビについての質問は主に岸本取締役と石原取締役が担当し、宮内社長の発言はなかった。
経営全般については、「米国ではメディアの買収合戦が起きているが、どう考えているか」との質問があった。金光修専務取締役は「当社は放送認定持株会社で、外資(による買収の)規制やマスメディア同士でも規制がある。ただ、現在のルールが未来永劫続くわけではない。そこも考えて経営していきたい」と回答している。
また、毎年恒例の「株主優待がなぜオリジナル手帳なのか」という質問もあった。和賀井隆常務取締役は「昨年にアンケートを実施し、1万人から回答をいただいた。うち6割が手帳を使っているということだった。利便性やコストも考えてよいと思う」などと答えた。
昨年の総会では、相談役に退く日枝氏の役割や、宮内社長の経歴のほか、都市開発事業出身の取締役や女性役員がいないことについても質問があった。だが、今年は一部の株主が例年のように特定の問題を追及する場面こそあったものの、経営課題や成長戦略に関する質問は少なく、中期計画についての質問は皆無だった。会社側と株主(主に出席する一部の過激な株主)の間で、コミュニケーションが取れていないことが浮かび上がった形だ。
もちろん、株主の不満は、株価が2016年から上昇基調にあるとはいえ、2000年の高値1万4000円台から大きく下落し、低迷している(27日終値は1869円)ことに起因しているだろう。だが今後、中期計画を完遂し、株価が上昇したとしても、一部株主が強硬姿勢を変えないかぎり“荒れ模様”が続くのではないか。そう感じさせる総会だった。
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