カローラとシビックの5ドアが復活した意味

トヨタとホンダの看板車種はどう変遷したか

同時に、世界初の低公害エンジンCVCC(複合渦流調速燃焼)を市販化したように、エンジン技術開発を疎かにしていたわけではない。1972年に発表されたCVCCは、排気対策で時間を要していたトヨタ、いすゞ、フォード、クライスラーへ技術供与され、米国EPA(環境保護庁)からはGMへ供給できるか問われるなどの反響をもたらした。

その後のシビックも、3代目の長い屋根を特徴とした独特の造形や、低回転での力と高回転での伸びやかな加速を両立するVTECエンジン、希薄燃焼を実現し低燃費を求めたVTEC‐Eエンジンなど、革新的造形やエンジン技術によって、小型車でありながら賢い選択として一目置かれる地位を確立していったのであった。また、6代目以降には「タイプR」という高性能仕様も加え、走り好きな消費者の支持を得てきた。

ちょっとぜいたくな気分を味わえるクルマ、カローラ

カローラは、初代で築いた80点主義プラスアルファの思想を継承しながら、小型車であっても貧相でなく、実用性に加えちょっとぜいたくな気分を味わえるクルマとして、4ドアセダンを中核に成長を続けた。その路線は、直接的な競合となるサニーをつねに引き離す市況を形成していった。

1991年の7代目では、1980年代後半からのバブル経済の影響を受け、1クラス上の品質や上級さを備えた小型車に仕立てられた。これを試乗した際の印象はなお記憶に残る。乗り込んだ際の室内の上質な印象や、走り出してからの静粛性、また運転している際の手応えの確かさなど、大衆車という概念を払拭する上級車の趣を持っていた。たとえて言うなら、1989年にトヨタ最上級車種として誕生したセルシオを思い浮かばせるような雰囲気や、見栄えを身につけたといえるだろう。

カローラは、日本車のベーシックとして大衆車の面影をずっと引きずり、いつかは「コロナ」→「マークⅡ」→「クラウン」へ格上げしていく第一歩とみなされがちだが、カローラであらゆることが十分満たされる絶対的価値を永年にわたりもたらしてきた。そのことがカローラの存在を不動にし、また海外においてもクルマの原点として重宝され続けてきたのだろう。

同時にまた、カローラは単に実用一点張りで、耐久性や信頼性に優れるだけでなく、運転の喜びを象徴する車種を打ち出してきた歴史がある。

初代のカローラ スプリンターがあり、SLと呼ばれるスポーティな車種が1968年に生み出された。2世代目では、1972年に「カローラ レビン」というオーバーフェンダーを備えた車種を誕生させた。量産市販車に、レース車両を思わせるオーバーフェンダーを装着するなどかつてなかったことだ。そのうえ排気量1600ccのDOHCエンジンを搭載していた。

もはや大衆車の面影はない?(撮影:風間 仁一郎)

1983年には、それまでのFRからFFへはじめてカローラは移行したが、2ドアクーペのカローラ レビンは従来のFRを継承し、その型式番号のAE86が、現行のスポーツカー「86」の車名の基になっている。

カローラは、4ドアセダンで世界の規範たる小型車の姿を追い求め、同時に躍動感ある小型2ドアクーペの価値も継承してきた歴史がある。

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