エアビーが強制キャンセル!民泊新法の混迷 観光庁の通達で閉め出される「違法物件」たち

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民泊新法で住宅宿泊事業を開始するためには、都道府県知事などに対して届出をしなければならない。東京23区や一部の政令指定都市では、区もしくは市が届け出の受理・監督などをする。東京23区では区が窓口になるが、6月15日以降、区のホームページに「住宅宿泊事業 届出住宅一覧」が掲載されており、区によって掲載項目が一部異なるものの、届け出のあった住所や届出番号が一覧で掲載されている。6月15日現在、確認をすると、新宿区で53件、渋谷区で50件、台東区で42件、港区で38件などとなっている。

つまり、一覧に掲載されている物件、宿泊業の許可を持っている施設以外が違法物件となる。エアビーでは6月7日以降、届出番号の登録がない物件に対し、6月15日以降の予約キャンセルに加え、物件自体の情報も非公開とする措置を取った。

東京都台東区浅草で一戸建ての自宅の一部を使い、エアビーを通じて民泊をしている女性は、会社に勤務しながら、週末や長期休みなどに外国人との交流がしたいということで、年間10日程度のみ営業している。

今回は手続きの複雑さもあって、6月15日の法律施行日までに間に合わなかった。幸いにも、同日以降の予約はなかったが、物件は非公開になってしまったのである。台東区への書類提出前に、保健所や消防署への事前相談、周辺住民への手続きを、書面によって通知すること(台東区は書類提出の15日前まで、新宿区では同7日前までの通知が必要)など、申請書類提出までには数週間の時間を要するようだ。

合法物件や低価格のホステルに予約集中

関係者によると、エリアによっては、掲載物件数は80%以上の物件が非公開になっているもよう。エアビーの掲載物件で、申請をすでに終えている物件や宿泊業を持っている宿泊施設は、予約数が一気に伸びている。

エアビーにも登録、宿泊業の許可を受けている東京都北区王子のホステル「ホップステップイン」を運営するニッチリッチ社の細井保裕代表取締役は、エアビーのキャンセル通知後に予約件数が一気に増えたと話す。

「これまでエアビーからは月に1~2件程度しか予約が入らなかったのが、キャンセル通知があった翌日以降、1日で10~20件の予約が入った。中にはホテル周辺の民泊を運営している人から、15日以降の宿泊を当ホテルに振り替えできないか、という問い合わせもあった」(細井氏)。民泊密集エリアを中心に許可を持つ、合法民泊やゲストハウス、ホステルなど、民泊と価格帯が近い宿泊先に予約が集中しているようだ。

ただ、都内におけるエアビーには安さを求める旅行者の利用が多く、価格帯がワンランク高いビジネスホテルなどへシフトする人は、限られているようだ。細井氏によると、4人部屋や8人部屋といった、グループでの予約が目立つそう。エアビー物件は人数が多いほど割安になることから、1名・2名利用より、3名以上のグループの利用が多い。

ほかに宿泊業の許可を受けている低価格帯の宿泊施設としては、「booking.com」(ブッキングドットコム)や「agoda」(アゴダ)などの宿泊予約サイトを通じた予約が多く、今回のエアビー騒動による特需は一時的なものという見方もある。一方、現状では登録件数の出足が鈍いことから、このまま予約が入り続ける可能性もある。6月15日には間に合わず、申請準備をしている民泊事業者も多くいるのだが、条件を満たせずに申請を諦める人も出ているもようだ。

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