大阪「カジノと万博の島」に鉄道は延びるか

IR誘致の候補地「夢洲」へ3つの路線延伸案

IRと万博の誘致活動は2018年に結論が出る。IR実施法は、今国会で成立する見通しだ。今後、国は最大3カ所の候補地を選ぶ。ライバル視された横浜市や東京都が消極姿勢に転じ、大阪府が最有力候補なのは変わらなさそうだ。

万博の開催地が決まるのは今年11月だ。フランスが候補を取り下げたことで「大阪が有利」との期待もあるが、競合相手のロシアとアゼルバイジャンも強敵だ。最後まで予断を許さない。

万博開催が決まれば、2019年度にでも地下鉄中央線の夢洲延伸工事に取りかからねばならない。ただ、ここに来て、2つの難問が浮上している。

地下鉄は万博開催年に間に合うか?

1つは、万博開催が決まったら、IR誘致の成否にかかわらず地下鉄工事に着手せねばならない点。

大阪府は、今年度に地下鉄の設計着手と第1期IR地区の土地利用開始を行い、2024年度にIR施設オープンと地下鉄夢洲延伸、2025年度に大阪万博開催……とのスケジュールを組んでいた。だが、IR実施法が今国会で成立しても、国がIR区域の選定をするのは2022年度以降との見方もある。それからカジノ(工期3年)や地下鉄(同6~7年)の工事に着手していたら、万博開催日までの完成は絶望的だ。

大阪市は、IR誘致の成否を待たずして、大阪万博のために夢洲への地下鉄を敷設せざるをえない。2017年3月の市議会では「IRが実現しなくても万博開催に必要な鉄道の整備は行っていく必要がある」との答弁もあった。ただ、それでは、半年の万博会期後、地下鉄延伸区間の経営見通しがまったく立たない。これには反対の声も出てきそうだ。

2点目は、地下鉄新線の最終的な資金スキームがまだ決まっていないこと。

夢洲延長の事業費は540億円で、そのうち国費で64億円、大阪市一般会計で64億円、市の港湾会計で212億円、市の第三セクターOTS社で200億円を負担するのが現在のスキームだ。あと、地下鉄中央線の輸送力増強に100億円かかるが、誰が負担するのか決まっていない。大阪市の財政負担がきわめて重いので反対意見も根強い。それゆえに、吉村市長はカジノ業者に200億円を負担させるアイデアを披露した。海外業者の一部は応じる姿勢を見せているが、それは大阪府によってIR事業者に選ばれた後の話であろう。

そもそも、カジノに地下鉄で来る人がどれぐらいいるのか。海外ではタクシーの利用者が多いと思うが、大阪では、競馬場などの公営競技と同様、公共交通の利用が主流になるのか。見本市会場や会議場、ホテルについても夢物語風のイメージ図が示されただけで、なかなか議論が深まらない。需要予測を後回しにして鉄道整備を進める姿勢に危うさも感じる。

夢洲開発を推進する大阪維新にも、橋下市長時代の強さはない。今年秋に「大阪都構想」の2回目の住民投票を予定していたが先送りせざるをえなくなった。来年は、新天皇即位、G20大阪サミット、大阪市長・府知事のW選挙……と政治日程がかなり厳しい。

肝心の大阪府民はどう感じているのか。

NHK放送文化研究所が2018年4月に公開した「大阪 万博誘致などに関する意識調査」(大阪府民18歳以上対象)によると、「大阪万博」誘致への賛成は45.7%あったのに対し、「カジノを含むIR・統合型リゾート施設」誘致への賛成は17.0%にとどまっている。

夢洲への鉄道は2025年の大阪万博開催までに完成するのか。今後も綱渡りのスケジュールが続きそうだ。

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