渋谷駅「埼京線ホーム」が遠く離れているワケ 2020年にはついに山手線と並ぶ位置に
現在、埼京線や湘南新宿ラインが走っている線路は、本来は「山手貨物線」だ。かつて渋谷駅埼京線ホームのあたりには貨物線の渋谷駅があった。簡単に言えば、その跡地を利用したというのが、埼京線ホームが現在地につくられた理由である。
渋谷駅が1885年に開業した当初、駅はこの貨物駅の場所にあった。1920年には輸送量の増加で複々線化され、もともとの線路が貨物線、新しくつくられた線路が山手線の電車が走る旅客用の線路となった。この際に旅客駅は現在の山手線の位置に移動したが、貨物駅はそのままの位置に残った。
貨物線を利用した埼京線
貨物線はその後も首都圏の物流を支えてきたが、1980年10月1日に山手貨物線の渋谷駅は廃止され、それ以降は単に通過するだけの場所となっていた。また、1973年に首都圏の外周を走る武蔵野線が一部開業すると、貨物列車の大半が武蔵野線経由に移行し、山手貨物線をどうするかが議論になっていた。
1973年1月5日の『朝日新聞』朝刊では、山手貨物線を今後どうするかについての記事が掲載されており、新幹線に使用する、山手線快速列車を走らせる、高崎線を乗り入れさせる……など、さまざまな方法で旅客利用の案が練られていたことが報じられている。1983年には、東京都が山手貨物線の池袋以南を旅客化し、当時建設が進んでいた通勤別線(埼京線)を大崎方面に延伸することを要望している。
東北新幹線に並行する形で整備された大宮―赤羽間の新線と、赤羽―池袋間の赤羽線を結んで「埼京線」が開業したのは1985年9月30日。当初は大宮―池袋間の運転だったが、翌1986年3月には山手貨物線に乗り入れて新宿への乗り入れを果たした。そして1996年には新宿から恵比寿まで運転区間が延長され、この際に現在地にホームができたのだ。
その後、山手貨物線渋谷駅跡地には事務所ビルやJR東日本系列の「ホテルメッツ」などが建てられた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら