早朝から竹林伐採、富国生命のユニーク研修 離職率を下げるための秘策

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入社3年以内の大卒離職率が3割を超える時代。1992年が2割強なので、わずか15年で1・5倍に膨らんだことになる。こうなると「近ごろの若者は……」という言葉が紀元前のエジプトでも見つかったなど、悠長にもしていられない。

新入社員と会社との絆をもっと太くしようと、「メンター(導師)制度」なる仕組みを導入したのが富国生命だ。富国では新入社員の9割が支社に配属される。ところが、近年、地縁・血縁をまったく持たない地方支社に配属された新入社員から、孤独感を訴えるケースが急増。それが離職率の増加につながりかねないとの危機感から、2006年度より「メンター制度」を導入したという。

皆で力を合わせて竹を切る

OJTとして職場に「チューター制」を導入する会社も多い。ただ、チューターは職場の先輩が務めることが多く、業務上の評価や利害関係が絡むことも多い。そこで富国のメンターは、所属外の先輩であることを条件にしている。ただ、コミュニケーションが円滑になるよう、出身地や大学が同じ者同士を組み合わせるような工夫はしているという。

さらなる特徴は、メンターは公募制で自ら名乗りを上げた人間に限ることだ。ただ、公募制ということで、熱意はあるが資質が十分ではない社員も応募してくる。そもそもメンターは業務上の悩みだけでなく、精神面の相談にも応じる。そこでメンター自身のスキルアップを図るため、メンターにも半年間のコーチングなどの研修を義務づけることにした。

新入社員研修の総仕上げには、静岡県伊東市にある富国所有の森林の整備を行う。前日からの合宿で同じ釜の飯を食い、翌早朝から山に分け入り、午前中いっぱい竹林伐採を行う。鬱蒼と茂る森の中で、皆で力を合わせて竹を切る。それだけで連帯感も深まるというものだ。

この結果、「新入社員の成長も著しく、離職率も低下した」と、人事部人材開発グループの鬼澤英夫課長は語る。さらに副産物として、メンターとなった若手社員も、コーチングなどの研修のおかげでさらなる成長がみられ、メンター・新入社員とも人的ネットワークが広がったなど、人材育成面でも成果があるという。

ベストセラーとなった『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)などで語られるジンクスを破ることはできるのか。富国の実験は続く。

(生保・損保特集編集部)

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