金正恩が「独特なヘアスタイル」を貫くワケ 会談直前!池上彰氏が北朝鮮の腹の内を解説

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さらに金正恩はあることをして、国民からの尊敬を得ようとします。何をしたと思いますか? 髪形を金日成に似せたのです。

金正恩には経験が何もありません。伝説の将軍であり、北朝鮮の建国者であり、偉大なる首領である祖父をまねることで、「偉大なる首領」金日成の血を引いていることをアピールします。

世襲はどう決まったのか

北朝鮮は、ソ連によってつくられた社会主義国家です。ソ連も、中国も、トップの座にいるときは独裁に近いかたちになることがありますが、世襲制ではありません。権力の座が世襲されるのは、王国くらいのものです。

なぜ北朝鮮だけ、こういう異形の国になったのでしょうか。建国時の指導者だった金日成の晩年の心配は、後継者のことでした。

ソ連の独裁者だったスターリンは、死後、厳しい批判にさらされます。中国では、毛沢東に一度は後継者指名された林彪(リンピョウ)が、クーデターを企てたとして追われ、逃走中に飛行機が墜落して死んでしまいます。

金日成は、死後に自分の名誉が失われたり、批判を浴びたりすることを恐れたはずです。自らがさまざまな人を陥れて地位を築き上げただけに、他人を信用できません。結局は自分の子どもしか信用できなかったのでしょう。

父親から息子へ権力を継承するきっかけは、1974年2月に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会にありました。この総会で、金正日の処遇が話題になった時、金日成が、「息子はまだ若いから政治局員に選出するのはやめたい」と言ったところ、金一(キムイル)政務院総理(金日成とは無関係)がこう言ったといいます。

「金正日同志を党中央委政治局員に迎えることは、革命の要請であり全人民の熱望です。若すぎるとおっしゃるが、主席も金正日同志と同じ年頃に朝鮮革命を勝利の道に導いたではありませんか。革命の運命にかかわる問題であるので、主席の考えを改めていただきたい」(重村智計『最新・北朝鮮データブック』)

この発言は、主席の意向に反対するように見せながら、実のところ、息子を後継者にしたい金日成の気持ちをくすぐる高度なゴマすりです。

一方、金正日もひたすら父親を大切にする姿勢を見せました。平壌市内に、金日成を讃える凱旋門や主体思想塔など、巨大なだけの、無駄な建物を国費で建設し、父親にゴマをすったのです。

金日成は「青年たちは革命を引き継ぎ、代を継いで推進しなければならない」と言い出します。「代を継ぐ」とは、金正日への権力の継承を意味していました。また、金日成に対してしか使われなかった「指導者」という言葉が、金正日に対しても使われるようになりました。1994年7月、金日成が亡くなると、金正日が北朝鮮という「王朝」を父親から譲り受けたのです。そして、「2代目」の金正日が死去すると、「王朝」は「3代目」の金正恩に引き継がれ、急ピッチで権力を握ります。

権力の座に就いた金正恩は、金正日時代の幹部たちを次々と粛清していきます。

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