メモリなき新生・東芝を覆う「内憂」の正体 反転攻勢には社員の信頼が欠かせないが...

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東芝の主力事業所の府中事業所(東京都府中市)。写真奥はエレベーター研究塔。稼ぎ頭のメモリ事業を失い、東芝は新たな収益源の確保が急務だ(編集部撮影)。

4月に就任した車谷暢昭会長兼CEOは、目指す方向性として「リカーリングモデル」「デジタルトランスフォーメーション」を挙げる。前者はサービスなどによる継続的な収入モデル、後者はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した事業を指すが、具体性に欠ける。

既存事業では、赤字のパソコンは売り先が決まらず、火力発電は世界的な需要縮小でリストラが避けられない。比較的安定しているエレベーターも伸び余地が乏しい。

経営陣は原子力事業をなお聖域化?

さらに憂慮すべきは、社員の経営陣への信頼感の低さかもしれない。車谷会長は若手社員との対話集会を頻繁に行っているが、ある幹部は「ブレーンも連れてきておらず、社内を掌握できていない」と冷ややかだ。

巨額損失を生み、メモリ売却の原因を作った原子力事業に関して「反省も説明もなかった」とあきれる社員は少なくない。

東芝は昨年、主力4事業を分社化した。その一つ、原子力を含む発電事業を営む東芝エネルギーシステムズの社長に今年3月、原子力事業出身の畠澤守氏が就任したことに対する疑問やあきらめも耳にすることが多かった。原子力事業をなお聖域化しているかのような経営陣の姿勢は、社員の不信感を増幅させている。

人材流出も止まらない。車谷会長は「(流出の)ペースは下がってきている」と話すが、「危機を乗り越えた経験を買われて、管理部門の転職が増えだした」(コーポレート部門幹部)、「優秀な若手が次々と辞めていく」(事業会社のベテラン社員)など、現場からは悲鳴が上がる。

東芝は年内に「東芝Nextプラン」と銘打った中期経営計画を打ち出す。そこで明るい未来像を示すことができるだろうか。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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