創業社長が更迭。思惑外れたジャフコ 社長更迭を機に、出資先企業の経営不振が深刻化

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優秀な社員が相次ぎ流出

もっとも、訴訟だけならば、ジャフコのダメージは大きくない。

むしろ深刻なのは、小林氏更迭で共闘した松谷氏が新たに社長に就任したものの、月次売り上げの不振が表面化するとともに、社員の流出が相次いでいることだ。加えて、代表取締役選任の事前承諾手続きがなかったことから、オリックス・キャピタルが「有価証券取得に関する覚え書き違反」を理由に、保有株式全株の買い取り請求をFLPに10月3日付で通告している。請求額は3000万円に上るだけに、年間売上高7億7000万円(2013年3月期)の同社の資金繰りにダメージを与える可能性も出てきた。

ジャフコは「ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合」を通じてFLPの発行済み株式の53%を握る筆頭株主であり、同社に約3億円を投じている。しかし、資金は投資家から集めたものだ。それだけに同社の経営悪化で、ジャフコ自身が投資家から責任を問われる事態もありうる。

松谷社長は7月の取材時に「人材流出は起きていない」と語っていたが、状況は変化している。昨年度の保険契約実績で優秀な成績を上げた上位4名が9月末までに相次いで退職。人材流出で下期はさらに業績が落ち込むおそれがある。

最近退職した社員は、「松谷氏が社長に就任した5月以降、新規契約手数料は前年同期の6割程度の月が続き、例年ならば、最も利益が上がる9月はさらに落ち込んでいる。このままでは、通期で赤字の可能性もありうる」と語る。そうなった場合、2期連続赤字(過年度決算修正による純資産減少を含めると実質3期連続赤字)になり、銀行借り入れにも支障が出かねない。

成功したかに見えたジャフコの計略だったが、株式上場や転売どころか、大誤算になる可能性が強まっている。

週刊東洋経済2013年10月26日号

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