「クルマ王国」米国で進化した路面電車の実力 市街地の軌道を地下化、ライトレールに脱皮

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ペンシルべニア州ピッツバーグを走るLRT(筆者撮影)

筆者も何度か動向をお伝えした栃木県宇都宮市および芳賀町のLRT(次世代型路面電車)計画は、今年3月に国土交通省が軌道敷設の工事施行を認可した。5月末に起工式を行う予定だという。

開業予定は2022年3月と、当初の予定より約3年遅れることになるが、我が国で全線新設のLRTは初でもあり、今後も注目すべき存在だ。

一方、岡山県の岡山市および総社市を走るJR西日本吉備線(通称・桃太郎線)でも、15年前から構想があったLRT化がここへきて動き始めた。4月上旬、両市長とJR西日本社長が会談し、LRTへの転換について合意したのだ。

こちらで注目したいのは、運行事業者として新たに第三セクターの会社を設立したりはせず、JR西日本が引き続き運行を担当することだ。実現すればJRグループにとって初めてのLRT路線になる。

「LRT」は米国発祥の言葉

このように再びスポットが当たりつつあるLRT、我が国では欧州の事例を参考にすることが多かった。しかしLRTとはLight Rail Transitの略であり、米国発祥の言葉である。

自動車王国と言われることもある米国だが、1960年代になると欧州同様、自動車に依存した社会が大気汚染や交通渋滞、都市のスプロール化などさまざまな問題を引き起こしはじめた。特にスプロール化は欧州より顕著で、多くの都市のダウンタウンは荒廃し、犯罪が多発した。交通問題のみならず都市問題も引き起こしていた。

公共交通としては路線バスが存在していたものの、交通渋滞に巻き込まれて遅れが恒常化しており、利便性の低下は深刻だった。さらに1970年代に入るとオイルショックに見舞われる。こうした状況から、都市問題解決のための鉄道が見直されるようになった。

その頃、欧州のドイツやスイスなどでは、既存の路面電車を近代化することで、現代の都市交通に転換させつつあった。米国はその姿に注目。重厚長大だった既存の鉄道と区別する意味で、LRTという言葉を使うようになったようだ。

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