体の痛みは健康状態だけが原因とは限らない エリート男性の人生を台無しにした「隠れ病」
男性は高機能の発達障害とみられ、昇進する前までは能力を発揮して活躍できていた。必要に応じて薬を使ったり、感情の理解・コントロールのトレーニングを行ったりすれば、今も活躍できていたかもしれない。
発達障害は、当人の得意・不得意な部分を周囲の人々が認識し、適宜サポートする(環境調整)ことによって、生きにくさが大きく改善される場合もある。「適材適所」とよく言われるが、この言葉は発達障害の人たちのためにこそあるのではないか。
ほとんどの医師は痛みが続く要因を診ていない
前述した通り、体の痛みには身体的な要因だけでなく、心理社会的な要因も絡んでくる。この男性のように、自らをうまくコントロールできなくなると、体の痛みにつながるきっかけとなることもある。
筆者が男性を診るまでの3年近い年月、他の医師が彼の病状に気づかなかったことも忘れてはいけない。筆者の印象では、発達障害を含む心理社会的な要因をまったく診ない医師がほとんどである。
筆者が他の医師と議論していると、「患者全体を診て、なぜ痛みが続いているのだろう、と考えていることを知って驚いた。患者が痛むところだけを診ればいいと思っていた」と話す人もいる。
この男性の場合も、他の医師がもっと早く気づいていれば、別の人生が待っていたはずである。
慢性痛は仕事の生産性も効率性も落とし、最悪の場合にはキャリアを失う。「なんとなく痛い」状態が続いているのであれば、思い当たる診療科で診てもらったほうがいいだろう。
それでも症状が改善に向かわない場合には、心理社会的な要因も含めて診断を下すペインクリニックの受診を選択肢に加えるのも1つの考えである。
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