銀座線や井の頭線…「稼げる路線」の共通点 大手・中小私鉄と地下鉄の営業係数を試算

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東成田線は1978年5月21日の開業時は本線の一部として成田空港アクセス路線としての役割を担っていた。だが、1991年3月18日に本線が旅客ターミナルへの乗り入れを果たすと、成田空港で勤務する人たちの利用に特化した路線となり、平均通過数量も1799人と大手私鉄で数値が公表されている路線のなかでは最も少ない。

京成電鉄にとっての救いは、東成田線の営業キロ中、6.0kmは本線と重複しており、実際の線路の長さは駒井野分岐部―東成田間の1.1kmだという点であろう。仮に旅客人キロを1.1km分で算出し直し、6.0km分の費用を本線に付け替えたとすると、費用は1億9129万円となって営業損失は1億2158万円まで圧縮され、試算された営業係数は274.3に改善される。

短距離客が多いとやっぱり儲かる

■地下鉄

東京地下鉄の銀座線は2014年度の営業係数が50.6と地下鉄中、最もよい営業係数が試算された。理由は京王井の頭線や名鉄瀬戸線と同様だ。公表値で373億2234億円の収入は東京地下鉄全線の10.7%に達するいっぽう、旅客人キロは6.9%、営業キロは7.4%しかそれぞれ占めていない点が決め手となった。

収入の割合が高い理由も井の頭線、瀬戸線と同じ。銀座線の旅客1人当たりの乗車キロは3.6kmと、東京地下鉄全線の8.0kmの半数にも満たない。このおかげで旅客1人1km乗車時の収入は25円と、同社全線の15円を大きく上回っているからだ。

同じく東京地下鉄の副都心線の営業係数は2009年度の96.2から2014年度には80.2へと大幅に改善した。2014年度の収入が192億2127万円と、2009年度の131億9020万円に対して金額にして60億円余り、45.7%もの増加を記録したからだ。

増収は、2013年3月16日に東京急行電鉄東横線、横浜高速鉄道みなとみらい21線との相互直通運転が開始されたからであることは言うまでもない。平均通過数量は2009年の13万3552人から2014年度は25万2350人と一気に2倍近くまではね上がっている点からも、乗り入れが副都心線に及ぼした影響の大きさがうかがえる。

■中小私鉄

首都圏、中京圏、京阪神圏の各交通圏内で営業を実施していないなか、福島交通は2014年度の営業係数が83.0と中小私鉄中、最も好調な数値を記録した。福島―飯坂温泉間の営業キロ9.2kmを結ぶ飯坂線だけから成る鉄道事業の2014年度の収支は、収入が4億9921万円、費用が4億1412万円、利益が8509万円であり、いずれも確定値である。

飯坂線の輸送人員は2009年度の256万人から2014年度は271万人へと15万人、5.9%増加した。運賃別に増加率を見ると、定期乗車券が12.2%と定期外の1.7%を大きく上回った点から、沿線の住宅開発や企業誘致が功を奏したと考えられる。定期乗車券別の増加率は、通勤定期が8.7%、通学定期が3.2%であることもこの推測を裏付けるものと言えるであろう。

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