空前の「がん治療薬」競争、ホンモノはどれ? 見極めるのは難しく投資家にとってジレンマ

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スイスのノバルティス<NOVN.S>と米ギリアド・サイエンシズ<GILD.O>がそれぞれ開発したCAR─T細胞療法が昨年初めて、希少な血液がんの療法として米食品医薬品局(FDA)の承認を得たことで、がん治療の世界が一変する可能性が現実味を帯びた。

この療法が固形がんにも効くようになれば、なおさら希望は膨らむ。

投資家にとっては痛しかゆし

しかし、数多くの医薬品企業とバイオ技術企業ががん治療分野に殺到する状況は、投資家にとっては痛しかゆしだ。よく似た製品がひしめいているため、どの企業が商業的な成功を収めるかの見極めが難しい。

新興企業などに資金を提供するシリコン・バレー・バンク(ロンドン)の生命科学責任者、ヌーマン・ヘイク氏は「競争が激しいということは、より慎重を期す必要があるということだ」と語る。

「バイオ技術における従来の投資テーマは、競争相手が少なく差別化され、価値を生み出す医薬品を見つけることだった。現在の状況は患者にとっては大いに恩恵があるが、問題は、競争優位性がどの程度長持ちするか、商業的な競争力がどの程度あるかだ」とヘイク氏は続けた。

トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想によると、がん免疫療法の売上高は2021年までに250億ドルを超える見通しで、年間1000億ドルのがん治療薬市場の中で最も急成長を遂げている分野だ。

医薬品企業の幹部は、その中で勝ち組となる療法の開発を目指しているが、競争の激しさを認識していないわけではない。

世界最大のがん治療薬企業であるロシュ<ROG.S>のセベリン・シュワン最高経営責任者(CEO)は「巨大な脱落者」が出てくると予想。仏サノフィの調査責任者Elias Zerhouni氏は先週アナリストに対し、複数の社が同時に開発を進めているため、各社とも研究・開発費を回収するまでの猶予期間が短くなるとの警戒感を示した。

非営利のキャンサー・リサーチ・インスティテュートのアイマン・シャラビ最高医薬品責任者も「技術革新のサイクルが大幅に短くなった」と語った。

(Ben Hirschler記者)

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