”団地”は忘れていたものを思い出させてくれる
高度成長期の日本であこがれの対象だった団地も、今では住民の高齢化や建て替え時の権利問題などでもめ事が起こることが多く、何かとネガティブなイメージが付きまとう。
だが、「誰も引っ越そうとしないのは、それだけ団地の住み心地がいいからだ」と辻野さんは言う。
辻野さんが団地の魅力に目覚めたのは5年前。会社の寮を出るに当たって、家賃の安い団地に住み始めたところ、予想外に住み心地がよかったのだという。部屋の間取りだけでなく、住棟同士の間隔や公園などの配置が「家族としてどう暮らすか」を追求した設計になっていることに気づいた。以来、日本全国の団地を巡ること500カ所。団地のすばらしさを啓蒙する場所として、「団地バー」を月2回開催している。希望者が集まれば、月に一度は団地見学ツアーも実施する。
辻野さんは、団地巡りの魅力を「忘れていたものを思い出させてくれること」と語る。その中には、知らない間になくなっていた、住民同士の濃密なコミュニケーションも含まれている。経済成長の中で忘れられてきた「古きよき昭和」を再評価する一連の動き。そこには、核家族化や効率一辺倒のライフスタイルによって寸断されてしまったコミュニティを再生するためのヒントが隠されているのかもしれない。
(週刊東洋経済)
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