「グーグルマップ」に載るとバスは便利になる 手間のかかるデータ作成をどう乗り越えるか

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GTFS形式はIT関係者から見るととてもよくできたフォーマットだそうだ。経路検索サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所コンテンツ開発部の山本直樹部長は「紐付けがしっかりされていて、項目も重複する部分が少ない。つまり無駄がなく、きれいに情報がまとまっている。さすがGoogleだと思った」と初めて触れたときの印象を振り返る。

日本ではこの形式を拡張して、国内のバス情報の標準フォーマットにしようという動きが国土交通省を中心に進められている。昨年発表された「標準的なバス情報フォーマット」はGTFS形式に準拠し、日本のバスに特化して作られたものだ。

GTFS形式および標準的なバス情報フォーマットとオープンデータとの関係(筆者作図)

ところで、筆者は以前オープンデータについての記事(2018年3月3日付「交通データ『オープン化』はなぜ進まないのか」)を書いたが、GTFS形式や「標準的なバス情報フォーマット」で作られたデータはすなわちオープンデータというわけではない。GTFS形式や標準的なバス情報フォーマットはあくまでもデータフォーマットの形だ。

小さなバス会社の挑戦

さて、「Googleマップ」掲載への具体的な取り組みを見ていこう。

前橋市内を走る永井運輸のバス。その路線のほとんどが東武バスなどの廃止代替路線だ(筆者撮影)

群馬県前橋市に、永井運輸というバス事業者がある。路線バス用に保有しているバスは全部で26台の小さなバス事業者だ。主な事業はトラック輸送で、ほかにバス、タクシー、不動産事業を手がける。バスは売り上げの3割、そのうち路線バスは2割で全体の売上高に占める割合は1割未満にすぎない。それでも需要の波が激しい貸切バス事業で運転士を安定的に雇用するために必要な事業だ。

いまこの小さなバス会社で、「Googleマップ」に自社の路線バスの情報を出そうという取り組みが1人の事務員によって進められている。担当しているのはバス事業部係長の水野羊平氏だ。普段の業務は、運行管理者として運転士の勤務時間の管理や健康状態の把握などを行うことと申請書類の作成や管理だ。

「本社では主に申請書類の作成や整理を行っている。昨今は全国的な運転士不足だが、弊社も例外ではない。そのため、貸切バスの繁忙期や交通が混乱する雪の日、運転士にけがや病気などあったときに自分でハンドルを握ってバスの運行を行うこともある」(水野氏)。そうした忙しい日々の中でGTFS形式のデータが作成された。

水野氏は「昨年、群馬県からバスに関するオープンなデータを整備するという話があり、説明会でGTFS形式について初めて聞き、実際に触れてみた。そのときは『これは事業者では作ることが難しい』と思った」と、初めてGTFS形式に触れたときのことを語る。それが変わったのが、ソフトウェア「その筋屋」との出会いだ。

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