「グーグルマップ」に載るとバスは便利になる 手間のかかるデータ作成をどう乗り越えるか

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ところで、水野氏、三浦氏が利用したソフト「その筋屋」は基本無償だ。おそらくそのことも2人の作業を後押ししたと思われる。しかし、優れたソフトなのになぜ無償で提供するのか疑問に思えてくる。理由を高野代表に尋ねた。

「『その筋屋』で稼ぐ考えはなく、自分が使うためのツールとして開発している。『自由に趣味のような楽しい気持ちで作ろう』と考えていて、価値をわかってもらえるバス事業者さんに『お裾分け』という形で無償提供することにした。いまの原動力はマニアックな謎の熱意(笑)。加えて、多くの喜びの声が届くことも大きな報酬となっている。今後もインターネットに時刻表や系統図を簡単に公開できる機能の追加、AIとの連携、自動運転への対応と、少しずつ実現させていきたい」

熱意のある人々がいま、バス業界で最前線となり、少しずつであるが新しい取り組みを進め始めている。

効果が見えにくいデータ整備

ここまで、Googleマップに対応するためのバス事業者の取り組みと、それを支えるソフトウェアについて見てきたが、実はGoogleマップへの対応について明確な効果測定はできていないのが実情だ。そして、データ整備に手間がかかることもあり、二の足を踏む事業者も多い。実際、取り組みを行った2つの事業者でもデータ整備のほとんどの作業は1名で担当しており、人員を割く余裕がないことがうかがえる。

申請書類作業の傍ら、データの内容に間違いがないかチェックをする永井運輸の水野氏(筆者撮影)

GTFS形式のデータ整備の課題と今後について、永井運輸の水野氏は実感も交えてこう言う。「データ整備をしたはいいが、今後どう発展していくのかわからない。そのため社内でも効果については『Googleマップで経路検索ができるようになる』としか言えないのが実際だ。今回整備したデータを自社内で何か利用できないかと思っているが、今すぐ何かに使えるものがない。本音を言えばデータ作成ノウハウやデータそのものをビジネスにできないかとも思う」。

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