原発で働かされた外国人実習生がはまった罠 技能実習制度には、2つの「抜け道」がある
こういった不正行為を撲滅するには、まず、技能実習機構に提出する技能実習計画書及び受入企業に備え付けが求められる技能実習日誌に関して、関連業務及び周辺業務についても、作業ごとに具体的な内容を記載させること、作業ごとに実習実施場所を記入させることを徹底させるための法改正を行うことが必要である。
その上で、認定された技能実習計画と実際に従事させている作業内容に齟齬がないかどうかを技能実習機構が監視して徹底的に取り締まるだけの人的基盤の整備が不可欠である。
技能実習機構(発足時の職員数は約330名)は、実習生の受入企業(約3万9000社)に対し、3年に1回程度の割合で実地検査を行うとしている。しかし、全国の労働基準監督機関において、2016年に受入企業に対して5672件の監督指導を実施したところ、その70.6%に当たる4004件で労働基準関係法令違反が認められたという現状に鑑みれば、まったく足りない。半年に1回程度の実地検査を可能とすべく、少なくとも6倍程度の人員増が必要であろう。
「下請けがやりました」は通用しない
東電は今回の件を受け、元請企業に契約内容の確認を徹底させるとしているが、このような人権侵害問題は、元請企業や下請企業だけの責任ではない。2011年に国連人権理事会が「ビジネスと人権に関する指導原則」を承認した。これにより、国連加盟国で企業が人権に対して責任を負うことが求められるようになった。
企業は、自社による作為・不作為の侵害のほか、自社との関係性(バリューチェーン、サプライチェーン)で生じた侵害にも責任が及ぶとされている。ビジネスと人権に関する国別行動計画を作成する旨を2016年に公表した我が国は、現在、企業活動における人権保護に関する法制度や取組みについての現状を確認するなど、同計画の作成に向けて対応中である。
2017年12月の「日経スペシャル ガイアの夜明け」(テレビ東京系)において、縫製工場で技能実習生の人権が侵害されている状況が告発され、直接の契約関係にはないものの、当該工場を生産工場としていた大手アパレルブランドが社会的に非難され「炎上」する一件があった。
このように現代においては、企業は、自社のコンプライアンスだけではなく、調達→生産→物流→販売という商品やサービス提供の全プロセスにわたって責任を持つことが求められている。直接、間接に技能実習制度を利用している大企業は多く、そのほとんどが、ガイアの夜明けで「炎上」した大手アパレルブランドと同様の爆弾を抱えている状態だ。一刻も早く、法律専門家など外部の第三者に依頼して、自社が取り扱う商品やサービスのプロセス全般について、法令違反状況がないかの監査を行うべきであろう。問題が発覚したときのレピュテーションリスク(企業イメージの深刻な失墜)は計り知れない。
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