マツダ、「200万台メーカー」への険しい道のり SUVが絶好調でも、米国の販売改革待ったなし

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世界販売200万台に向け、生産面だけでなく、開発面でも布石を打つ。カギとなるのは「一括企画」の深化だ。

一括企画とは、小型車や中型車、SUVといったセグメントを超え、おおむね5年分をひとくくりにして、車全体や部品を企画する開発手法。2012年発売のCX-5以降の車種開発に採用されている。現在は「コモンアーキテクチャー(基本骨格)」と呼ばれる1つの開発・生産コンセプトに基づき、車種間で構造や部品設計に共通性を持たせている。このため、設計開発の効率が上がり、新しい技術や部品によるコスト増を吸収することができるようになった。

マツダが2017年の東京モーターショーで発表したハッチバックの「魁(かい)コンセプト」。この車に搭載された次世代技術「SKYACTIV-X」は、2019年から新型車への導入が始まる(撮影:風間仁一郎)

マツダは今後、コモンアーキテクチャーを「スモール」と「ラージ」の2種類に分けると発表した。スモール商品群のアーキテクチャーは、CX-3や米国で新たに発売される予定の新型CX製品など120万台に適用される。一方、ラージ商品群のアーキテクチャーはCX-5、8、9などの80万台に適用され、高付加価値商品として収益性向上に貢献させたい考えだ。

経営戦略コンサルティング会社、ローランド・ベルガーの貝瀬斉パートナーは、「開発の基となる構想を2つに分けるだけで、物理的に大きな設備投資が必要になるわけではない。『CX-4』や『CX-8』など車種が増えてきたなか、アーキテクチャーの種類を分けたことは妥当な判断」と評価する。

台数と収益のバランスを保てるか

マツダが掲げた世界販売目標200万台。その実現には、電動化やカーシェアリングなどモビリティサービスの大きな波の中で、今の販売台数増のペースを保持できるかどうかがカギになる。「日本でのブランド力向上という成功事例をグローバルに移し、体制の盤石化に着実に向かっている」(貝瀬氏)ように見えるが、あまりに高い台数目標に引っ張られると、安売りで収益性を毀損した過去の失敗を繰り返すことになりかねない。

世界の各市場で、収益と台数のバランスを取りながら成長するというのは決して一筋縄ではいかないだろう。マツダの「完全回復」までには、少し辛抱がいりそうだ。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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