松屋銀座、GINZA SIX効果薄れても活況のワケ 「ピュア百貨店」と呼ばれる老舗の老獪戦術

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老獪な戦術で快走を続ける松屋銀座には、当面は追い風が吹く見通しだ。開業2年目を迎えたギンザ シックスについては、「開業効果が薄れる」と銀座エリアへの呼び水としての機能が若干後退すると見る百貨店関係者は多い。だが、3月開業の東京ミッドタウン日比谷が新たな集客装置になっていることに加え、今夏にはソニービル跡地に「銀座ソニーパーク」が開設される。

さらに、銀座エリアは空前のホテル開業ラッシュを迎える。外資系ホテルのマリオット・インターナショナルが最高級のラグジュアリーホテルを2020年に開業するなど、ここ3年で10件以上ものホテル建設が控えているのだ。銀座エリアは国内外からの観光客が当面増え続ける、と見て間違いないだろう。

訪日客に支えられる不安

とはいえ、松屋銀座の今後には不安要因も残る。まず、「数年前のように、訪日客需要が落ちた際の影響が気になる」と、前出の生地氏は指摘する。

松屋銀座は2017年度の免税売上高が前年度比18%増の伸びを示したが、免税以外の店頭売上高は同2%増にとどまった。全店売上高のうち約25%が免税売上高と、現在の好成績は訪日客需要に支えられている側面が大きい。

訪日外国人客の消費動向は移ろいやすい。2016年に中国政府が個人輸入商品の関税を引き上げたことで、中国人の日本での購買が大幅に減少したことは記憶に新しい。つまるところ、国内客をどれだけ呼び寄せることができるか、という百貨店各社に共通する経営課題が、松屋銀座にも突き付けられている。

また、昨年12月末に、フィンランドの食器メーカー「イッタラ」の商品供給契約が終了した。女性客に人気の催事「ムーミン展」などと連携して各種のフェアを打ち出していただけに、この契約終了は販売促進面で痛手となる。新たに複数の北欧リビングブランドを集めた直営店「スキャンデックス」をオープンさせたが、軌道に乗るかどうかは不透明だ。

「百貨店らしさ」を訴求し、需要を喚起し続けることができるか。老舗の松屋銀座の動向は、百貨店業界がいかにして生き残っていくかという意味でも、一層注目される。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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