BMW「MINI」、輸入車1位を築いた戦略の要諦 大きくなった分、新たなファンを獲得した

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――「人」については?

これはMINIチーム(インポーター)と国内の121のMINI販売店で働く皆さんのことでもありますが、お客様のことでもあります。われわれのお客様は、来店した段階でどのクルマにしようか迷っているわけではなくMINIを買いにきています。全員じゃありませんが、その率が高いブランドです。また購入される方の多くがスペックを気にしません。

私自身が良い例です。実はほかの会社に勤めている時期にMINI六本木でMINIを買いました。セールス担当がいろいろと説明をしてくれようとしましたが、それを断り、すぐに契約しました。契約した時点では馬力も知りませんでした。MINIであることを気に入って買ったのです。こうした特別なお客様の気持ちが離れないように、プロダクトとブランドを磨いているのです。

販売台数が目的ではないならば何が目的なのか

――日本での販売台数ナンバー1は目的ではないとおっしゃいましたが、では目的は?

フランソワ・ロカMINI本部長(筆者撮影)

日本の方々がMINIをどうとらえるかが重要です。少し前までわれわれはトレンドセッター(流行を仕掛ける人)でした。多くの派生モデルを展開したり、豊富なオプションパーツを用意したりといった手法は、日本でもここ数年で多くのブランドが追従するようになりました。クロスオーバー的なモデルを派生させる大掛かりなものから、ストライプのステッカーを設定するなど小さなものまで。多くのフォロワーを生み出したと自負しています。

そこでわれわれはまたひとつ先へ進もうとしています。それはコミュニケーションの変更です。最近はカタログでも店舗の装飾でも、バーチャルではなくリアルな見せ方をするように心掛けていることにお気づきでしょうか?

できるだけ加工しない。ありていに言えばフォトショップ(Photoshop)をなるべく使わないということです(笑)。そのために背景にも気を配らなくてはならず、ライティングにも気を遣いますが、リアルな見せ方をするように心掛けています。

新しいことに挑戦しているように聞こえるかもしれませんが、われわれこそ、ただ変わり続ける人々の嗜好をフォローしているだけなのです。われわれがリアルな見せ方を提案しているのではなく、世間の人々がそういうものを評価するようになってきたということです。そういうことに敏感であることが、MINIの魅力を保つのに重要なことだと考えています。目的は何か?という質問に対しては「トレンドセッターからクリエーティブクラスになること」とお答えします。

(※編集部註 クリエーティブクラスとはデザイン思考を身に付けて仕事に生かしている人材を指す言葉です)

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