ヤマハ「新型管楽器」はなぜ日本でウケたのか 見た目はリコーダー似でも音色はサックス風

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こうして楽器が完成するが、発売を前にして、社内では「本当に大丈夫か」という賛否両論が巻き起こった。ヤマハはこれまで製作した楽器をオーケストラに使ってもらうなどして、音を極めてきた。歴史的にも、楽器はより良い音を出すために発展してきた。ヴェノーヴァは今まで重きを置いていた価値観を捨てることとなり、むしろ退化したとも言える。しかし「顧客にとってこの楽器の価値は自由に気軽に遊んでもらうこと」と定めて発売を決めた。

ヤマハが提供するアプリを使えば、ヴェノーヴァの練習ができる(写真:ヤマハ)

ヴェノーヴァは実際にはどのようなシーンで使われているのか。発売後、開発陣が想定していたとおり、先進国では、気軽に山や海に持ち運んで演奏する写真や動画がSNSには数多くアップされている。

ほかにも、吹奏楽の中で演奏さたり、ほかの楽器と一緒にアンサンブルを行ったりしたという話も聞こえてくるという。

新興国市場へも積極展開

発売開始から1年。ヴェノーヴァの展開は今後どうなるのか。世界首位の総合楽器メーカーであるヤマハは、学校教育や音楽教室向けの豊富なラインナップを強みとしてきた。引き続きビジネスの軸は先進国だが、人口が増え、中間層が厚みを増しつつある新興国市場も魅力的に映る。ヤマハは今、中南米の音楽教育で生徒たちにシングルリードの楽器体験をしてもらおうと、運指表を現地の学校に送るといった提案活動も始めている。

ヤマハはヴェノーヴァの教本も用意した。「手軽さ」という新機軸で、新しい市場を開拓できるか(記者撮影)

「新しい風として、今よりももっと開かれた人にリーチしていきたい」と生みの親である中島氏は話す。まだヴェノーヴァの存在を知らない人は、世界中に何億人、何十億人といることが念頭にある。ヤマハはマスへのリーチを狙い、SNSによるヴェノーヴァの宣伝活動にもさらに力を入れる考えだ。

もちろん、ヴェノーヴァを通じてほかの自社製品にも興味を持ってもらい、できれば販売につなげたいという商売気もあるだろう。楽器開発の常識に「手軽さ」という新機軸で逆らったともいえる新製品の好調ぶりは、ヤマハの楽器作りにどのような影響を与えていくか注目される。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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