Web漫画で花を開かせた男の諦めない生き方 洋介犬は20年かけてオンリーワンに到達した

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現在は3本の連載をこなしながら、突発的な仕事も受けており、寝る間もないほど忙しい。

ただ現在は流れが止まらないうちは、このまま頑張って流れに乗っておきたいと思っている。先のことは流れが止まってから考えればいいと思えるようになった。

「ホラー漫画を描く前に比べて、将来に対する不安が消えました。これはもちろん売れたというのは大きいですが、それ以上に『自分のスタイルが確立された』というのが強いですね。『後味の悪い、どぎついサイコなホラー作品』はちょっと他の人には描けないだろうと思っています。

そして過去の経験も役立っています。ネタを大量生産するスキルは4コマ漫画家時代に鍛えられましたし、キャラクターを特定の人物に寄せて描く技術は広告時代に得たものです。すべて無駄ではなかったですね」

漫画家の裾野は広がっている

昔に比べて漫画家の裾野は広がっている。

漫画家になるのはたやすくなったが、漫画家として永続的に食べていくのは昔より難しくなってきている。

そんな時代を生き残るポイントは何なのだろうか?

「編集さんの中には“あくが強い漫画家”を嫌う人が少なからずいるんですよ。僕も、『あなたの作画はクセがあるので他の人に任せて、原作だけやってくれないか?』と頼まれたことがあります。迷ったのですが結果的に断りました。自分の絵にクセがあるのは重々承知なんですよ。ただ、どぎつい顔や、クリーチャーの造形は、僕にしか描けないという自信があります」

キレイなだけの漫画、完成度が高いがインパクトの薄い漫画は生き残りづらくなっていくのではないかと思う。

荒削りだが一点突破するパワーを持った作品のほうが読まれるかもしれない。ただし一発屋が継続して漫画を描いていくのも難しい。

「絶対数の多い中から、自分の作品を選んでもらうにはどうしたらよいか……。誰でもできることをやっていると、もっとスキルのある人が現れると消されてしまうんです。

だから自分にしか描けない、オンリーワンの漫画を描くのがいちばんいいと思います。ただしそれはとても難しいですね。僕は20年かかりました(笑)」

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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