南北会談の焦点は「非核化」より「終戦宣言」だ ネット検索のトップに「終戦」が急浮上

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ただし、朝鮮戦争の終結宣言を平和協定につなげるには数々のハードルがある。その最大のものが、在韓米軍への影響だ。

韓国に駐留する在韓米軍は、朝鮮戦争時に、国連決議を経て緊急に結成された「朝鮮国連軍」としての機能も兼ねている。

朝鮮国連軍は、休戦が守られているかを監視し、有事の際には平和を守るため北朝鮮に応戦することが国際法上認められている。しかし、戦争が終われば国連軍は不要となる。在韓米軍の規模も今より縮小されるだろう。

朝鮮戦争を「終戦」させると何が起こるか

実は、トランプ大統領は、朝鮮半島に張り付けになり、北朝鮮のミサイルの脅威にさらされている在韓米軍について、機会があれば縮小したいと考えているようだ。

今年3月、ミズーリ州で開いた支援者との集会でトランプ大統領は、「米国は、韓国との間で巨額の貿易赤字を抱えている。一方で韓国を防衛している」「北朝鮮と韓国の間に3万2000人(の在韓米軍)がいるが、どうなるか様子を見よう」と、撤退を示唆する発言を行い、米政府関係者を慌てさせた。

平和協定の問題は、実は日本にも深くかかわっている。朝鮮国連軍は、日本政府との間で「朝鮮国連軍地位協定」を結び、有事の際には、日本国内の米軍基地7カ所を国連軍が使用できるとしている。日本の防衛態勢の見直しも行われるだろう。

文大統領は、朝鮮戦争の終結プロセスが始まれば、北朝鮮は、自国への脅威が減ったと感じ、自然と非核化に応じてくると読んでいるはずだ。

ところがその韓国では、また違った意味で終戦宣言への期待が高まっている。韓国では若者に一定期間の兵役の義務がある。もし、朝鮮戦争が終われば、兵役義務もなくなる。このため、トランプ大統領が、終戦宣言支持の発言をした直後、韓国のポータルサイトでは、一時検索語で「終戦」という単語がトップを占めた。

文大統領は、終戦宣言を通して、自分の支持者である若年層にアピールする狙いがあるのかもしれない。

いずれにせよ、南北首脳会談で注目すべきは、「非核化」より「終戦宣言」なのは間違いない。

五味 洋治 東京新聞 論説委員

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ごみ ようじ / Yoji Gomi

1958年、長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞東京本社入社。韓国・延世大学に語学留学の後、1999年から2002年までソウル支局に勤務。2003年から2006年まで中国総局勤務。この間、2004年に北京国際空港で金正男に偶然会ったことからメールのやり取りが始まり、のちに単独インタビューを実現させる。2008年8月から10カ月間ジョージタウン大学にフルブライト留学。現在は東京新聞論説委員。著書に『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)、『父・金正日と私 金正男独占告白』(文春文庫)など。

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