政策もズレてきた安倍政権、「幕引き」への道 3つのシナリオ、連休前後に流れが決まる

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そして今後の展開である。可能性は3つ。

第一は、9月の総裁選前に退陣するケースだ。もり・かけ疑惑は収まらず、防衛省の日報問題、セクハラ問題も響いて内閣支持率の低下に歯止めがかからない。4月の訪米に続いて5月には日中韓の首脳会談が東京で開かれ、安倍首相のロシア訪問も予定されているが、「外交で政権浮揚を目指す」(首相側近)ことはかなわず、国会混乱の責任を取る形で退陣に追い込まれる。「6月退陣の可能性は徐々に大きくなっている」(自民党幹事長経験者)との見方がある。

その場合、後継の総裁・首相を選ぶ自民党総裁選をどうするかが焦点となる。全党員参加の総裁選をしている余裕がないので、国会議員や都道府県連の代表者による投票という案も出てくるだろう。党員票に期待する石破茂元幹事長にとっては不利、国会議員投票なら期待が持てる岸田文雄政調会長には有利となる。安倍氏の出身派閥の細田派、麻生氏の麻生派という党内第一、第二勢力の動向が注目される。

第二は、安倍首相が夏まで政権を維持し、9月の総裁選直前に「不出馬」を表明するケースだ。相次ぐ不祥事による支持率低下で、安倍首相の自民党内求心力も弱まり、総裁選に向けて石破氏の勢いが増す。2012年の総裁選で争って以来、安倍氏にとって石破氏は宿敵。当初は「党内融和のシンボル」として幹事長に起用したが、信頼関係はない。「石破氏にだけは後継首相をやらせたくないのが、安倍氏の本音」と首相側近は話す。安倍氏としては余力を残したまま退陣し、後継に岸田氏を指名して石破氏の流れを阻止するという戦術を取る可能性が大きい。

第三は、逆風をしのいで9月までに政権の勢いが回復し、安倍氏が総裁選で3選を目指すケースだ。石破氏や野田聖子総務相らも立候補して接戦となる。岸田氏が出馬と安倍氏への加勢のどちらを選ぶかがポイント。「ここで出馬しなければ、政治家として終わりだ」(自民党の閣僚経験者)という見方が強まる中で、岸田氏が名乗りを上げれば、いっそう混戦模様となる。激しい総裁選は党内に亀裂を残すだろう。

自民党は選挙での議席減が避けられない

ただ、留意すべきなのは、誰が総裁になっても2019年夏の参院選で自民党が苦戦を強いられるのは確実だということだ。2013年の参院選は第2次安倍政権誕生直後の「ご祝儀」で自民党が圧勝、その議員が改選を迎えるため、議席減は避けられないからだ。

こうした中、安倍首相の周辺からは「衆院解散・総選挙で局面転換」という声が聞かれる。国会が混乱しているため野党への牽制を狙った発言だが、安倍首相は「行政に対する信頼を回復するため、ウミを出し切る」と言っており、行政の立て直しを進めるのに立法府である国会の衆院を解散するのは筋違いだろう。与党の公明党の賛同も得られない。何よりも、解散なら議席を減らす可能性が大きく、「危険なばくち」(自民党幹事長経験者)である。

安倍政権が総裁任期満了を待たずに幕を閉じるのか、それとも粘り腰を発揮するのか。大型連休前後の与野党の攻防や世論の動向が大きなカギを握っている。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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