エリート官僚のスキャンダルが続出する根因 内閣人事局の「課題」と「処方箋」<前編>
これは、考えてみればすぐわかる。国家公務員の総数は60万人弱。いくら官吏の事務を掌理するといっても、こんな数の公務員すべての人事管理を内閣が行えるわけがない。このため、実際は、官僚人事は各省の大臣の所管として運用されていた。
さらに、各省の大臣も長くて2年。3年やったら驚異という時代であったから、大臣といえども、個々の官僚の能力や性格、適性などを子細に把握するのは到底不可能であった。さらに言えば、国家公務員は政治的に中立であるべきことが国家公務員法に定められており、過度に政治が官僚人事に影響力を持つことに躊躇があったということもあるだろう。
こういった理由から、事実上官僚人事は、事務方である官僚サイドにほとんど委ねられていたが、こうした中でも閣僚が官僚人事に介入したようなケースはあり、逆に「珍しいこと」として大きな話題になった。筆者が勤務した経済産業省の例でいえば、新進党政権時代に、当時の次官最有力候補者が「政治的に特定勢力と近すぎる」という理由で大臣によって退任を要求された事例は、小説にもなっている。
このように、長く官僚人事は事務方(=政治レベルではなく官僚レベル)によって行われてきたのだが、他方で、官僚独裁とか政府・閣僚を官僚が牛耳っているといった批判も後を絶たず、「試験を通ればなれる官僚ではなく、選挙で選ばれた政治家が政策を決めていくべきだ」との声が次第に大きくなっていった。
こうした動きは福田内閣下で渡辺喜美特命大臣によって強力に推し進められ、さらに、民主党内閣になってから「政治家自らが汗をかく」とのキャッチフレーズの下に、官僚を使うのではなく、官僚に仕事をさせず細かい事務仕事まで自分たちがやる……といった見当違いの事象も発生した。
ただ、民主党内閣時代も、「官邸が官僚を牛耳るべきだ」という思想は連綿と受け継がれ、2010年と2011年に内閣人事局の創設を含む国家公務員法改正案が提出されたが、いずれも成立しないまま廃案となっている。
その後、2014年4月に安倍内閣下で国家公務員制度改革関連法案が可決され、人事院の一部、総務省行政管理局の査定(組織や定員の管理)部門、人事・恩給局の旧人事局関係部門などを統合する形で内閣人事局の創設が決まったのである。なお、この法案には自民・公明・民主の3党が賛成している。
内閣人事局の基本的な仕事とは?
内閣ホームページによると、「内閣人事局は、国家公務員の人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織として、関連する制度の企画立案、方針決定、運用を一体的に担って」いるとされている。ただ、良くわからないのは、いったいそこに何人の職員がいて、どういう仕事をしているかだ。
内閣人事局のホームページによれば、その基本的な仕事は、
① 国家公務員の人事行政(女性活躍推進などを含む)
② 国の行政組織に関する行政
③ 幹部職員人事の一元管理(新たに付加された権能)
となっているが、正直なところ、この①と②は、女性登用に関する発信などはあるものの、どれだけ内閣人事局が実働し、影響力を発揮しているかは定かではない。
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