「朝貢」を求められた日米首脳会談の顛末 色あせたトランプ―安倍「蜜月」の内実
そして、その貿易交渉の場になるのは、新設される、茂木敏充経済財政相と米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表との間で協議される、貿易と投資についての枠組みになりそうだ。もともとある「日米経済対話」は麻生太郎財務相とマイク・ペンス副大統領が協議するもので、日本側には、経済にそれほど明るくないペンス副大統領との間で、交渉をうまく着地させる狙いがあった。
しかし、ライトハイザー代表は、1980年代の日米貿易摩擦のころに、USTRで対日交渉に携わってきた強硬派の玄人であり、日本側の目算はここでも狂うことになった。
トランプ大統領と安倍首相は「蜜月」だということが主に日本メディアで伝えられてきた。今回の日米首脳会談では、鉄鋼・アルミ関税で日本を適用除外にしないだけでなく、日本が働きかけてきた環太平洋経済連携協定(TPP)への米国の復帰についても、トランプ大統領が「2国間交渉」を優先する考えを鮮明にし、「蜜月」とは違う実相が幅広く伝えられている。ただ、2017年11月の首脳会談の際、すでにトランプ大統領は、安倍首相をいわば部下のように扱う姿勢はあらわれていた。
11月の中間選挙に向けて強まる圧力
2017年11月に、筆者が「トランプ-安倍会談に見た蜜月の微妙なズレ」で書いたように、米メディアは「トランプ-安倍」間が上下関係のような状態になっていることに注目しており、今回の首脳会談でそうした点が一層鮮明になったと思う。
トランプ大統領は、日本との交渉期間について「短期間のうちに」とも語っており、今後、米国で11月に実施される中間選挙に向け、米国から日本に譲歩を求める圧力は強まるおそれがある。
EUなどと比較して、日本にまず欠けているのは、米国が不当な施策をとってきたときに、つながりが深い同盟国として、「不当だ」と正面から言える態度だと思う。EUはそうした毅然とした態度を通じて、譲歩を迫られることもなく、鉄鋼・アルミ関税については適用除外になった。
日本は、首脳間の「蜜月」の幻想が揺らぐなかで、このままでは米国の「不当な要求や措置」の適用を除外してもらうために、本来必要ないはずの譲歩策の提示を何度も迫られ、なんども土産を持っていかざるを得なくなる「朝貢」外交を余儀なくされるおそれがある。
EUなど各国のように、日本も米国に対して毅然と正論をぶつけることができるのかどうかは今後、日米貿易交渉を左右する重要な要素の一つになるのではないか。そのときに、トランプ大統領と安倍首相の信頼関係がどこまで本当に深いものなのかが、試されることになると思う。
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