「朝貢」を求められた日米首脳会談の顛末 色あせたトランプ―安倍「蜜月」の内実
世界貿易機関(WTO)は、安全保障上の懸念がある緊急時に限ってこうした措置を認めているが、トランプ政権のやり方は明らかに無理筋だ。トランプ大統領本人が18日の会見で示唆したように、鉄鋼とアルミに追加関税をかけているのは、「米国全体の貿易赤字が巨額だから」というのが本音の理由だからだ。
「貿易赤字が大きいから、個別の製品を狙いうちして、関税をかける」のは、自由貿易に反し、国内だけを見たあまりにも不当な保護主義政策だろう。
それだけに、トランプ大統領が3月1日、この鉄鋼・アルミ関税を課す方針を打ち出すと、世界各国だけでなく、政権内の身内も猛反発した。トランプ政権の経済政策の司令塔だった国家経済会議(NEC)のゲイリー・コーン議長は、鉄鋼・アルミ関税に強く反対してきており、結局辞任するに至った。
欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は、「米国の鉄鋼業界を守るためのあからさまな介入で何の正当性もない」と真正面から批判し、「不当な政策でわれわれの産業が打撃を受けるのをただ傍観することはしない」と、報復措置をとる考えをすぐに表明した。
カナダも外相の声明で「絶対に受け入れられない」とし、「カナダの国益と迅速な対応をとる」として対抗措置を示唆した。
そして中国は、「米国の誤ったやりかたに対し、中国は必要な措置をとり、自らの合法的利益を守る」と表明し、対抗措置をとった。中国は3月下旬に、米国産品計約30億ドル分の輸入に追加の関税をかける報復計画を発表したのだ。
弱腰で正論を言えなかった安倍政権
EUや各国は、米国の不当な施策に対して正論を真っ向から立ち向かい、対抗措置をとる可能性をすぐに打ち出したといえる。
これに対し、日本の安倍政権は弱腰だった。菅義偉官房長官や、世耕弘成経済産業相が遺憾の意を示したものの、世耕氏は「日本からの鉄鋼やアルミの輸入は米国の安全保障に悪影響を与えることはなんらない」と訴え、日本を適用除外としてもらえるよう働きかけるばかりだった。日本政府は、トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税という不当な保護主義政策に正面から抗議することなく、ただひたすら「日本は除外してほしい」と繰り返していた。
そして、正論を言った国と言わなかった国とで、明暗が分かれた。
米国の鉄鋼・アルミ関税を、「不当な政策」と即座に批判して対抗措置をちらつかせたEUのほか、カナダ、オーストラリアは結局適用除外になった。
一方で日本は、米国の主要な同盟国のなかでは唯一、鉄鋼・アルミ関税が適用された。正論を言わず、「安倍-トランプ」関係に賭けた日本政府側の淡い期待は打ち砕かれた。
ただ、日本側は今回の日米首脳会談で、除外を勝ち取ることを模索していた。会談前、トランプ政権に近い関係者は私に、「日本を適用除外にする検討は米国内でなされてはいる」と明かしていた。日本を除外するかどうかは、トランプ大統領の決断にかかっているようだった。
その結果、どうなったのか。
18日の会見では、ニューヨーク・タイムズ紙のマーク・ランドラー記者がその点を、安倍首相に質した。
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