日産「アルティマ」が全米へ訴求する革新技術 NYショーで唯一、新型セダンを披露した理由

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ただ、近年はシボレー・マリブやフォード・フュージョンなどがエンジンの排気量を下げてターボ(過給機)でパワーを出すダウンサイジング化の動きも見られる。日本車でもホンダ・アコードもそれまでの2.4Lの自然吸気(NA)エンジンを1.5Lターボエンジンに、V6 3.5Lエンジンを2.0Lターボエンジンに置き換えた。ちなみにトヨタのベストセラーカーであるカムリはこの流れに背を向けて2.5L直4エンジンと3.5LV6エンジンのラインアップを維持している。

画期的な可変圧縮比機構を持つ新世代エンジン

そして日産は新型アルティマの標準グレードこそ自然吸気の2.5Lエンジンを残しながらも、上級グレードには「インフィニティQ45」に導入したのと同じ2LのVCターボエンジンを搭載。このVCターボエンジンは画期的な可変圧縮比機構を持つ新世代エンジンだ。

新型アルティマ(筆者撮影)

内燃機関は燃料と空気の混合気を燃焼室に吸入して、圧縮したところで点火し、燃焼させ、その力を膨張行程での運動エネルギーとして取り出すわけだが、原則的に圧縮比が高いほど効率がよくなる。ジェットエンジンの圧縮比はおよそ30:1にもなる。ガソリンのレシプロエンジンではあまり圧縮比をあげると異常燃焼のノッキングが発生しやすくなるので通常は10:1程度だ。

近年、燃費向上技術として普及してきたターボエンジンの場合、空気を事前にコンプレッサーで圧縮しているので、見かけの圧縮比よりも圧力が高くなってしまうため、圧縮比を自然吸気よりも下げるのが常道だ。しかし、ターボのブースト効果の効いていない低負荷時にはかえって効率が下がってしまうデメリットがある。

物理的な圧縮比を運転中に変化させられれば、低負荷時からフルパワー状態まで理想的な燃焼効率に近づけることができる。

2000年ごろには、スウェーデンのいまは消滅してしまったサーブが、シリンダーブロックにヒンジを設けて、アクチュエーターでまるでアコーディオンのようにブロックの長さを可変させるサーブ・バリアブル・コンプレッション(SVC)という可変圧縮機構を提唱し、ボルボ、プジョー・シトロエン、ルノーなどとともに日産も共同研究に参加していたことがある。

その後ゼネラル・モーターズ(GM)がサーブを買収してから、この野心的な研究は終わってしまったが、2016年のパリサロンで、日産がSVCとはまったく異なる機構で圧縮比を変化させるVCターボ技術を発表した。

SVCがシリンダーヘッドの位置を相対的に上下させて圧縮比を調整しようとしたのに対して、日産のVCターボではその逆にピストンの上死点をクランクシャフト周りの複雑なリンク機構とアクチュエーターによって変えてしまう。

ターボがフル作動する高負荷時には8:1の圧縮比で作動させて、低負荷時には14:1まで圧縮比を高めることで燃焼効率を高めている。自然吸気で旧来エンジンの概念だと、高出力を得るためには圧縮比を高めるのがセオリーなのでちょっと混乱しやすいのだが、ターボが空気を圧縮してから燃焼室に送り込むため、圧縮比8:1であっても、点火時の燃焼室内圧力は非常に高くなっている。

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