UACJが異例の「人事撤回」会見に至った事情 登壇した2人は退任、筆頭株主に恨み節も

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4月13日、人事案の撤回を発表するUACJの山内重德会長(左)と岡田満社長(記者撮影)

これまでに見たことのない会見だった。アルミニウム圧延で国内最大手のUACJは13日、首脳人事案の撤回を発表した。会見に臨んだ2人の会長と社長は、ともに代表権のない相談役に退く。自らの退任を発表する2人の表情は、終始硬いままだった。

会見冒頭で山内重德会長は今回の変更人事について「当初は代表取締役会長、副会長、社長の総力戦で経営に取り組むと考えたが、今回は新体制の下、山内と岡田(満社長)は一歩引いた状態でバックアップすることになった」と説明した。

人事案に筆頭株主が公然と批判

同社は2013年10月、古河電気工業のアルミ子会社・古河スカイと住友金属工業(現・新日鉄住金)系の住友軽金属工業が合併して誕生した。今回退任する山内会長は、当時住友軽金属の社長、岡田社長は古河スカイの社長だった。合併から4年半、山内-岡田体制が続いた。

異例の展開が始まったのは、合併後初の社長交代人事を発表した今年2月末からだ。人事案では、6月の株主総会後に、住友軽金属出身の石原美幸取締役兼常務執行役員が社長に昇格。他方、山内会長は留任し、岡田社長は代表副会長に就任する予定だった。山内会長が言う、「総力戦」への移行だ。

そこに待ったをかけたのが、筆頭株主で24.9%の株を保有する古河電工だった。古河電工は人事案が発表されると即座にリリースを公表。「山内会長・岡田社長体制による経営の実績を見ると、合併前に計画されていた合併効果の実現に至らず」「株価も合併前よりも下落」「(山内・岡田両氏が代表取締役として経営陣に残るのは)ガバナンス上の大きな問題をはらんでいる」と人事案を公然と批判したのだ。

大株主が会社の人事案に公開の下で反対を表明。しかもその大株主は、かつての”古巣”だ。古河電工の小林敬一社長は3月、新聞社のインタビューで改めて山内会長・岡田社長の退任を要求。「ほかの大株主や機関投資家も賛同してもらえると思う」と、株主総会での委任状争奪戦も辞さない構えを示していた。

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