トヨタ「ノア」3兄弟が日産・ホンダを圧す理由 セレナとステップワゴンの追撃も寄せつけず

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一方、今年3月、日産はセレナに「e-POWER」と呼ぶ、エンジンが発電に徹することで実質的な電動駆動ができる仕様を追加した。セレナ、ステップワゴンともにパワートレーンの面で、ノア3兄弟を追い掛ける態勢は整った。

セレナ「e-POWER」(撮影:尾形文繁)

ただ、それでもノア3兄弟の優位はなかなか崩れそうにない。

ステップワゴンはハイブリッド車仕様を追加後に販売台数が伸びているが、それでもセレナを上回るほどでもない。「ホンダ販売店は売れ行き好調な軽自動車の『N-BOX』の販売に注力するあまり、ステップワゴンの拡販にはあまり手が回っていない」という声は自動車販売業界でよく聞く。

日産「ノート」でも好評の「e-POWER」を搭載したセレナ。2018年3月単月ではヴォクシーを抜いたものの、日産販売店が自社登録によって需要を先食いしていたり、そもそもe-POWERの現状の生産能力には限りがあったりするなどといったことが、自動車業界でささやかれている。

有利なのはトヨタの持つ販売力の強さにある

そもそもノア3兄弟、セレナ、ステップワゴンはかなり近いコンセプトであり、初代ステップワゴンが登場したときのような商品力の圧倒的な差はつけにくくなっている。その点で、ノア3兄弟が有利なのはトヨタの持つ販売力の強さにある。

ノア3兄弟はレクサスを除くトヨタ4系列すべてで販売される(ノアはカローラ店、ヴォクシーはネッツ店、エスクァイアはトヨペット店、トヨタ店)。その拠点は5000店舗以上に上るとみられており、それぞれ2000店強といわれる日産、ホンダ系販売店を圧倒する。新車販売にはなんだかんだで人海戦術的な要素がまだまだ残っている点からも、日産、ホンダがこのカテゴリーでトヨタを逆転するのはかなり難しい話なのだ。

トヨタの販売現場では意外な話を聞くことができた。あるトヨタ系販売店のセールスマンが言う。

「確かに(ノア3兄弟の)現行モデルデビュー直後はハイブリッド車に注目が集まりました。しかし今ではハイブリッド車のほうが納車は早くなっていて、ガソリンエンジン車のほうが納車までに多少お時間をいただいております」

ハイブリッド車よりも普通のガソリン車のほうが人気はあるというのだ。

その背景について前出のセールスマンに聞くと、「単純に同じグレードでガソリン車とハイブリッド車とでは50万円ほどの価格差(ハイブリッドが高い)があります。しかし実用燃費ではガソリン車が健闘していて、50万円をすぐに埋められるほどの燃費の大差はないんですね」。メーカーのウエブサイトを見ても人気グレードのトップはガソリンのX(8人乗り)となっている。

ノア3兄弟を買うようなメインユーザーは、「現役子育て世代」であり、所得のなかから少しでも多く子どものための費用にあてたいという心境が働く。その世代にとって手元の50万円は大きいのだろう。

このクラスでハイブリッド車を選択することは贅沢消費の側面がある。この点からもステップワゴンのハイブリッド車追加やセレナ「e-POWER」の投入が、ミドルサイズ背高ミニバンの勢力図に劇的な変化を与えるとは考えにくい。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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