JT株主、「加熱式出遅れ・株価低迷」に不満続出 国内たばこ市場急減、3年で利益600億円消失

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縮小

ただ、本当に株価の低迷は加熱式たばこの出遅れだけによるものなのか。見逃せないのが、ここ数年JTの業績そのものが伸び悩んでいる点だ。

JTは国内の紙巻きたばこ市場で60%超という高いシェアを持つ。日本市場だけで連結全体の利益の約40%を稼ぎ出し、展開している他国に比べて圧倒的。「日本市場はJTにとって利益の源泉」(寺畠正道社長)だ。

その国内市場は急激な縮小に陥っている。1996年のピーク時に3483億本だった紙巻きたばこの販売数量は、2017年に1514億本と半減。特にこの2017年は加熱式たばこへのシフトが急速に進み、前年比で12%も販売数量が減った。

シェアが高いJTはこの影響をモロに受けている。

国内事業で見てみれば、直近ピークだった2016年は売上高6842億円、セグメント利益2602億円だったものが、今2018年は売上高6080億円、利益は2020億円まで縮小する見込みだ。

1994年の上場以来、消費増税などに合わせて主要銘柄で本体価格を値上げすることで、販売本数が減っても利益を確保してきた。だが最近は市場の急速な縮小に値上げが追いついていない状態だ。

国内の減速が海外の成長を相殺

当然、JTも国内市場のこうした状況を見据え、以前から海外で買収を進めてきた。2007年には2兆2000億円で英ギャラハーを買収。2015年には米レイノルズアメリカンの「ナチュラル・アメリカン・スピリット」(当時の売上高は176億円)の米国以外の事業を6000億円で買収してきた。

直近では約1000億円でフィリピンやインドネシア、約1900億円でロシアのたばこメーカーを買収。海外の大手たばこメーカーは再編が進み案件が限られてきたため、小粒な新興国のメーカーにも手を伸ばしている。

だが買収を繰り返してきた海外でも、縮小する国内事業を補うのがやっとの状況だ。今期は海外事業の約300億円の増益分を、国内での約300億円の減益で相殺してしまう見込みだ。

寺畠社長は総会の最後のあいさつで株主に対して「期待に沿えるよう、企業価値増大に邁進していく」と宣言。株主総会の議案として提示されていた、配当や取締役の選任、相談役と顧問の制度廃止など、5つの議案すべてを賛成多数で可決し、終了した。

1月に就任した寺畠社長は、これまで海外事業を統括する子会社の副社長として新型たばこの販売や買収後の統合などを担当してきた。

国内の加熱式市場での巻き返しと海外で買収効果を発揮し、来年の総会で株主に胸を張ることはできるか。寺畠社長の手腕が試される。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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