JR西「東海への遠慮」が台車トラブルを拡大? 新幹線台車亀裂の「遠因」を有識者会議が言及
「60歳くらいの男性です。どうぞ」「60歳くらいの男性ですね。服装の特徴を教えてください。どうぞ」「白いシャツとスーツを着ています。どうぞ」「白いシャツですね。スーツの色も教えてください。どうぞ」。
これは、列車の乗務員が指令員経由で駅の係員に乗客対応を依頼するやりとりだという。その乗客が何両目のどのあたりにいるかが伝われば十分にも思えるが、間違いが起きないように詳細に確認し合うという。
「止めるべき」と明確に発言したのか
「今お聞きいただいたのは『確認会話』と呼ばれるもので、相手の発言内容を復唱する。抽象的な言葉があったら、具体的な言葉に言い換えてもらう。相手の発言に言い間違いがないか疑問を持つ、わからないときは自分が理解できるまで何度でも聞き返す、語尾に“どうぞ”を付けて発言が終わったことを示す、というのが会話の基本ルールです」とJR東海の広報担当者が教えてくれた。
他のJRにも確認したが、どの会社もほぼ同様のスタイルで会話をしているようだ。ただ、急を要する場合などに、このルールに基づくやり取りが行われない場合もあるという。今回のJR西日本のトラブルがまさに当てはまる。
今回のケースでは、保守担当者が「列車を止めて床下点検をしたい」と明確に発言すれば、トラブルがここまで大きくなるのを防げていた可能性は高い。その意味では確認会話の徹底が重要なようにも思えるが、有識者会議では「明確に発言できなかったのは、保守担当者にそこまで言い切れる自信がなかったから」と考えている。
そのため、「保守担当者が力量を高めれば、自信を持って列車を止めたいと発言できる」(安部教授)として、提言には、保守担当者らが判断力を高める研修や訓練を行うべきだという指摘も盛り込まれた。
しかし、提言の中で見落とされている点がある。その一つは、JR西日本とJR東海の関係性だ。
東京―博多間を走る新幹線区間においてJR東海のエリアである東海道新幹線・東京―新大阪間の重要性は極めて高い。ピーク時は通勤電車並みの3~4分間隔で運行する過密ダイヤ。東海道新幹線区間に山陽新幹線区間の遅れを持ち込んでは大変だ。
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