「ユーロトンネル」はバスを積んだ列車が走る

英仏海峡下を走るのは高速列車だけじゃない

貨車内に貼られた非常時脱出に関する案内。車両の構造がここから読み取れる(筆者撮影)

クルマによる海峡横断では、依然としてフェリーも航行しており、料金も安いが、速さの点ではトンネル経由のほうが圧倒的に分がある。フェリーは片道約100分だが、ル・シャトルなら対岸までわずか35分。ロンドンから見た距離は、英国側トンネル入口の方がドーバーのフェリー埠頭よりも15kmほど近いため、所要時間や燃料消費を減らせるメリットもある。

ユーロトンネルを走る独シーメンス社製ユーロスター「e320」は時速320km走行が可能なのだが、トンネル内の制限速度である160kmに抑えられている。高速での衝突事故では被害がより大きくなるとして、速度を抑えているのだ。それに加え、ユーロスターが時速200km以上の高速運転を行なった場合、最高速度が140kmのカートレインとのダイヤ調整も難しくなる。

カートレインには2階建てバスも入る

ル・シャトルで注目すべき点は、カーフェリーと同じようにクルマごと貨車に乗り込み、そのままの形で目的地に向かうというその輸送形態にある。かつて日本にあったカートレインのように、クルマは貨車に乗せ、乗客は客車に乗るといったものとは全く趣きが異なる。

2階建て観光バスが楽々入る、4m以上ある貨車内の高さは圧巻だ(筆者撮影)

このような輸送形態を実現するにあたり、ル・シャトル用貨車には次のような特徴がある。まず、耐火性を重視するため、車体はステンレス製だ。また、海底という特殊な環境を走ることから、車内の気密性を保つため、連結部分の通路のドアは人が通れるギリギリの幅まで狭めてあるほか、まるで「タッパーの蓋」を開け閉めするかのようなゴムパッキングの付いたドアが取り付けられている。

さらに、車高が高いクルマでも載せられるという大きな特徴がある(それでも架線には引っかからない)。ユーロトンネルの車両限界は幅4.1m、高さ5.6m。TGVが走る路線の車両限界である幅3.15m、高さ4.32mよりも大きく、大型トラックはもとより、2階建ての観光バスでも楽々入る。実際に、ロンドンとパリやブリュッセルなどの欧州各地を結ぶ国際定期バスには、たくさんのダブルデッカーが使われている。早めに乗り込めば、2階席の先頭でバスがル・シャトルの車内へと吸い込まれて行く様子をしっかり観察することができる。

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