放送法改正、なぜ安倍首相は積極的なのか 放送法4条の撤廃が焦点に

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この問題を国会でも取り上げた奥野総一郎衆院議員(希望の党)は、放送法の規制レベルをネットに合わせたときの問題点について「ネットに合わせて規制を比較的自由にしたときに、権力が放送内容に対して口出ししてくることも考えられる」と指摘した。

現在は放送法3条で放送内容に対する外部の介入を禁じている。

一足先に政治的公平規制「フェアネス・ドクトリン」が撤廃された米国では、トランプ大統領が一部の放送局を「フェイクだ」と攻撃。メディアの政治色の偏りなどを背景に、社会の分断が強まっている。

ペンシルベニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・スクールのビクター・ピッカード准教授は、米国の状況について「政治的なバランスや公益を守ることを約束させるセーフガードがなくなって、メディアはより市場原理に影響されやすくなり、結果として極端な議論、センセーショナリズムに支配されてしまった」と指摘。「米国の経験を教訓として、日本は警戒感を持つべきだ」と忠告した。

元NHKプロデューサーで武蔵大学の永田浩三教授も「戦争中、放送が旗振り役を担ったという歴史がある。放送法は国民の表現の自由を最大限生かしながら健全な民主主義の発達を支えるもので、その歴史の流れを無視して4条だけをいじるのは全体を見ない議論だ」と批判した。

安倍首相のけん制か

複数の関係者の間では、今回の改革方針は、憲法改正をテレビに邪魔されないための安倍首相のけん制ではないかとの観測も出ている。テレビ局は国から電波の割り当てを受け、放送事業を営んでいる。認可を取り消されると放送事業を継続できなくなるため、そうした事態を連想させることで、テレビ局をけん制しようという見立てだ。

これに対して改革推進派は「改革はあくまで通信と放送の融合とコンテンツ産業の強化が目的で、政治的なものではない」(政府関係者)と指摘。

「電波の有効活用ということでこの議論をはじめたのは確かだが、放送から電波を取り上げようとは誰も言っていない。将来像についても、すでにそのレールが敷かれているわけではない」と強調している。

昨年、規制改革推進会議は電波の利用権を競争入札にかける「電波オークション」導入を議論したが、「検討継続」となり、事実上、結論が先送りされた過去がある。政府内の温度差が大きい中で、どこまで改革に踏み込めるかはまだ不透明だ。

(志田義寧 取材協力:安藤律子 編集:田巻一彦)

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