佐川氏喚問は「森友全容解明」につながるのか 自民党は動揺、問われる野党の「喚問力」

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注目されるのは各党の喚問者の顔ぶれだ。特に、野党6党の喚問者は「政権攻撃のための重大証言を引き出す役割」(希望の党)が求められている。当然、各党とも検事や弁護士出身、さらには官僚OBの論客を選ぶことが予想される。特に、午前中の参院予算委の喚問が全体の流れを左右するが、自民党はトップバッター候補として丸川珠代前五輪担当相の名前を挙げる。東大卒の民放アナウンサー出身で弁が立ち、容姿に似合わぬ鋭い突っ込みで自民党の追及ぶりをアピールする作戦だ。これに対し、参院で野党側のトップバッターになるのは民進党で、大塚耕平同党代表や検事出身の小川敏夫同党参院議員会長が浮上している。

メディアが注目するのはやはり「絵になる喚問者」(民放テレビ幹部)だ。とくに、国会審議での"首相の天敵"と位置付けられている女性議員たちの出番に期待が集まる。具体的には、立憲民主党国対委員長の辻元清美氏、同参院国対委員長の蓮舫氏、社民党の福島瑞穂副党首(参院)らだ。辻元、蓮舫両氏については国対委員長に起用した枝野代表が「安倍シフト」と解説した経緯もあり、「持ち前の鋭い突っ込みが、鉄仮面の佐川氏にとっても脅威になる」(立憲民主幹部)との声が広がる。

一方、立憲民主が野党の一番手となる衆院の喚問では、同党の枝野代表とともに「女性の切り札」と期待されていたのが、2年前に「保育園落ちた、日本死ね!」で首相を追い詰めた山尾志桜里氏だ。ところが、22日発売の『週刊文春』に、半年前の「ダブル不倫疑惑」の続報として、山尾氏との親密交際が指摘された男性弁護士の元妻の手記が、特ダネとして掲載された。「山尾志桜里さん、夫と子供を返して」との大見出しで、不倫疑惑の果てに離婚に追い込まれた元妻・A子さんの「2人が夫婦の寝室で過ごしたことに、立ち直れないほどのショックを受け…」などの赤裸々な告白が暴露されている。

山尾氏は不倫関係を否定して昨年10月の衆院選に無所属で出馬して当選、その後、立憲民主党に入党して活動している。もし今回、喚問者として「佐川氏のウソ」を暴こうとすれば、与党側から「喚問する資格があるのか」と野次られ、テレビのワイドショーなどでも面白おかしく取り上げられるのは避けられないだけに、立憲民主党も二の足を踏んでいる。

「本当のことを話せば幸せに」と呼びかける前川氏

27日の佐川氏喚問が決まったことで、国会での与野党攻防やメディアの政局報道も「すべて喚問の結果待ち」となりつつある。しかし、過去の証人喚問劇でも「真相解明どころかかえって疑惑が深まった」(自民長老)というほろ苦い結末が大半だった。現在は鎮火している加計学園問題での「爆弾証言」で政権を揺さぶった前川喜平前文科事務次官は佐川氏に対し、「本当のことを話すと幸せになれる」と呼びかける。枝野代表も街頭演説で「佐川さん、国民のために証言してくれ」と絶叫して聴衆の大喝采を浴びている。

「誰が、何の目的で」、という多くの国民の疑問に、公僕だった佐川氏が真摯に証言することができるのか。「刑事訴追のおそれ」という壁に遮られて、これまで何回も繰り返された「通過儀礼の政治ショー」に終わるようなら、国民の政治不信の高まりが政権を直撃し、「日本の民主主義が問われる事態」(自民長老)にもなりうる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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