テスラがEVに隠した「謎バッテリー」の正体 マーケティングと性能の密接な関係
もちろん、そう簡単にバッテリーの容量を増やすことなどできるはずはない。種を明かせば、車両をソフトウエアで遠隔制御し、「今まで使用されていないバッテリー」の使用を一時的に解放したのだ。
実はこれまで販売されていたテスラのEV「60」と「60D」モデルは、最初から75kWh容量のバッテリーが搭載されているのだが、ソフトウエアによって60kWhに制限されているのだ。この一件でテスラの車両には必要以上のバッテリーが搭載されていることが公になった。
これも、高級車だからこそできたことである。低価格帯の車種であれば、とてもではないがこのようにバッテリーを遊ばせておくことなどできなかっただろう。
テスラはクルマの会社ではなく電池の会社になる?
テスラは2017年7月から、新型コンパクトEV「モデル3」の生産を開始した。モデル3の価格は約400万円と価格水準はそこまで高くない。これは従来のテスラの戦略が「ぶれた」のかというと、そうではない。新しいステージに進んだと見るのが妥当だ。
テスラのEV事業戦略は、ロードスター、モデルS、モデルXというプレミアムセグメントに絞ったところからスタートした。この戦略が奏功し、投資費用を早期に回収する一方で、自社のブランド価値を発信するとともに次世代事業の開発費を捻出したのだ。これを元手に、高級車セグメントより大きな普及価格帯車両の市場を狙い、満を持してモデル3を投入したのだ。
EVという技術革新とこうした事業戦略により、次世代の高級車も普及車も市場を押さえようとしているテスラだが、彼らはすでに一歩先を見据えている。
テスラは2017年からネバダ州で稼働を開始したギガファクトリーを所有している。これはパナソニックと共同で設立したバッテリー製造施設であり、東京ドーム10個分の大きさを持つ「世界最大の建築物」と言われている。
生産量は年間35GWhを見込まれており、この圧倒的生産量を背景に、将来的には競合各社が太刀打ちできない価格帯でのバッテリーシステムを実現したうえで、自動車だけでなく、定置型蓄電池などの他社への外販拡大を狙っているのだ。
バッテリーを武器にテスラがこれからどのようなビジネスを展開するのか、今後も目が離せない。
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