ユニクロの業績が左右する日本株の先行き 個人投資家の利益確定売りや政局にも着目だ

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昨年9月のメジャーSQ(株式先物取引や株価指数オプション取引の最終決済日)から11月までに外国人投資家は先物で3兆4000億円を買い越した。自民党の衆院選大勝などで日経平均が10月24日に市場最長となる16連騰を記録した頃だ。

しかし外国人投資家はその後、11月から今年3月2日にかけて5兆1000億円の売り越しに転じた。家入氏は「2012年末から始まったアベノミクス相場以降で、外国人投資家が最も急激に買い越して最も急激に売り越した局面だった」と指摘する。

この高低差をつくったのは、先物などを使って運用するヘッジファンドであったと考えられる。これらのヘッジファンドは、米国の金利上昇をきっかけとした株・債券市場の混乱で損失を被ったとされる。結果として、それまでに積み増した株や債券などの売却を迫られた。

中には損を出しているファンドだけでなく、欧州株で巨額のショート(下落方向に賭ける投資)を行っているとして最近注目を集めている、米ブリッジウォーター・アソシエーツのようなやり手のファンドによる売りも混じっていそうだ。世界最大のヘッジファンドである同ファンドが日本株のショートに着手したと、米通信社のブルームバーグは2月中旬に報じている。

不安要素は「森友問題」などの政局

問題は今後の相場展開だろう。先述した家入氏は先行きを占うポイントとして、次の2点に着目する。

1点目は日経平均が2万2100円台を再度回復できるか否かだ。2月の急落局面では外国人投資家が株を大きく売った反面、国内の個人投資家が買いに回った。それらの個人投資家が利益確定の売りを出せば、市場が潜在的に抱える売り圧力は減ることになる。その利益確定の売りの出る水準が、日経平均でいうと2万2100円になるというわけだ。

日経平均は2月末にいったん2万2100円台を回復している。その際、個人の利益確定売りは一部出たようだが、まだ残っていると考えられる。

ユニクロの業績を投資家は注視している(撮影:真城 愛弓)

2点目は「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの業績。4月12日に2018年8月期の中間決算が発表される。そこで出てくる業績が市場の期待値を上回れば、株式市場全体の回復に弾みがつくと、家入氏はみる。

ファーストリテイリングは日経平均への寄与度(影響度)が大きく、外国人投資家の間でも知名度の高い銘柄だ。昨年7月発表の第3四半期決算では国内ユニクロ事業の苦戦が露呈し、投資判断を引き下げる証券アナリストも現れた。この流れを受けて外国人投資家は9月のメジャーSQまで日経平均先物の売りに回った。

日経平均は3月14日終値で2万1777円。ファーストリテイリングの業績も足元好調に推移していることを考えると、家入氏の挙げた2点をクリアすることは難しくないように思える。

ただ、ここにきて不安要素として浮上してきたのが政局だ。「働き方改革」法案における裁量労働制拡大の断念や、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を財務省が改ざんした問題など、安倍政権への逆風が強まっている。これらの動きを受けて、日本株への投資比率が高い海外ファンドからは足元で資金が流出している。

2月の米国金利上昇と相場急落を機に、「適温相場」の終焉が指摘されている。適温相場とは、景気が回復する一方で金融緩和は継続され、相場が緩やかに上昇すると誰もが期待する状態。日本の場合、安定していた政局も外国人投資家の安心感を醸成し適温相場を支えていた大きな要因だっただけに、見過ごせないポイントだ。

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緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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