「引っ越し難民」にならないために打つべき手 最悪のピークは、3月24日から4月8日だ

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もっとも、年間の売上高の多くを稼ぎ出さなければならないピーク時に、受注抑制して競争から抜けるには、勇気がいる。そのような中、いち早く昨年の繁忙期に受注を前年の2割減とし、業界で初めての定休日を8月から導入したのが、「アート引越センター」のアートコーポレーションだった。同社では「採用・定着などに効果が出ている」としており、「業務効率の見直しなどで、今年の繁忙期は前年より受注を10%アップした」(同社)。

大手専業者や大手兼業者の一部の動向として、企業などの法人契約先に対する差別化も見られる。法人契約とは、企業や大学生協などが人事異動や卒業・就職などに伴う引っ越しの際に契約事業者を推薦するもので、1事業者のみと契約しているケースと、複数の事業者と契約し社員や学生が推薦された事業者から1社を選ぶケースがある。そこで大手引っ越し事業者の中には、自社のみの単独契約の法人を優先し、複数事業者と契約している法人の受注件数を減らすような動きがあった。これも引っ越し難民化を促進する一因だ。

また中小の兼業者を見ると、すでにこの間、折からのドライバー不足で運送事業を廃業した事業者もいる。あるいは運送事業を継続しているものの、ドライバー不足でメインの企業間物流に集中、兼業の引っ越しから撤退する事業者もあった。下請け事業者も同様で、一時的な下請け仕事よりレギュラーの仕事を優先しなければならなくなっている。引っ越し事業をしている兼業者でも、労働時間短縮を図るため、繁忙期においては長距離の引っ越しを請けないような傾向が出てきた。ドライバーの運転時間や休憩時間など拘束時間の規制があるためだ。

例年なら2月ぐらいから引き合いが来るのに、今年は年明けから注文が入り、スケジュールが埋まってきている。

法人契約でもどこを選ぶかは個人

その理由についてある引っ越し事業者はこう説明する。「法人契約先では昨年暮れにドライバー不足で自社の荷物の輸送に苦労した。そこで、3月の年度末に向けて輸送手段を確保するとともに、定期人事異動に伴う社員の引っ越しも、早めに対応するようになった」。

長年にわたり、複数の企業や大学生協などの法人と契約して引っ越し事業を行ってきた中小兼業者の1社では、「学生の卒業・就職に合わせて引っ越しをしてあげたいが、すでに企業からの注文でいっぱいなので請けられない」という。

多くの企業と法人契約している別の事業者は、社員に対する企業の姿勢の違いが見えてきたと語る。「転勤予定の社員に早めに事業者に相談するよう勧め、社員の子どもの学校など家庭の事情を聞いて、ベターな引っ越しプランを考えてくれるように要請する企業もあった」。一方、人事異動は会社の業務の一環であり、それに伴う引っ越しは事業者を推薦するが、どうするかはあくまで個人の問題と割り切っている企業もあるという。

引っ越し難民が続出する中、「本当に困っている人に引っ越しを無料でお手伝い」するというのが、「レントラ便」のハーツだ。同社は東日本大震災や熊本地震の際、被災地支援を行った。今回は3月23日から4月8日の間、首都圏エリアで限定10件のみを無料で手伝う。10件のみとしているのは「社員の仕事を増やすわけにはいかないので、社長である自分が手伝うため」。引っ越し風景の写真を撮影、簡単な感想文を書いてもらい、場合によってはレントラ便の公式サイトで紹介することを条件としている。

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