「子ども被災者支援法」が骨抜きの危機 原発事故被災者や自治体が、国に“異議申し立て”

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しかし、政府は意図的に支援対象地域を限定的にしようとしているように見える。基本方針案では「準支援対象地域」など福島県外で個人線量計(ガラスバッジ)を配ることで外部被ばくの状況を把握したうえで、健康管理のあり方を有識者会議で決めるとしている。しかし、2年半も過ぎた今になって個人線量計で測ったとしても、これまでの被ばく状況がわかるわけではない。むしろ、被ばく線量の過小評価につながる可能性が高い。

説明会はわずか2回、参加者は270人程度

政府が支援法の施策をできるだけ小規模にとどめようとしている疑いは、パブリックコメントの期間が当初、15日間(その後、25日間に延長)という短期間に設定されたことや、住民への説明会が福島市と東京都内での2回しか開催されていないことからもうかがい知ることができる。説明会はともに平日の昼間に開催されたこともあり、来場者は計270人程度にとどまった。

復興庁は「説明会とは別にパブリックコメントで多くの意見が寄せられている」というが、多かったのが「手続きに関するもの」で約2000件を占める。その中には「説明会や公聴会を全国各地で開催してほしい」「基本方針案の撤回を求める」といった意見も多く寄せられていると見られるが、それらの声が反映されずに基本方針が閣議決定されてしまうとしたら問題だ。

原発事故時に千葉県松戸市に住んでいた、5歳の男児の母親の脇ゆうりかさん(47)は、「放射能からこどもを守ろう関東ネット」の仲間とともに、政府に何度も「地元で公聴会を開いてほしい」と申し入れてきた。それだけに、「被災者の声を十分に聞かずに現在の基本方針案が閣議決定されるのはおかしい」と語る。

郡山市から静岡県内に家族で避難している長谷川克己さん(46)は、「最も多くの被災者が納得できる基準は、年間1ミリシーベルト。それを無視して支援対象地域を市町村単位で決めることは、被災者の分断を招くことになる」と語気を強める。

このままでは、政府の信任が問われる事態になりかねない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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