不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか

50年前にできた基準に縛られる合理性はない

しかし、日本では、今の基準であっても「不動産仲介手数料は高すぎる」と考えるユーザーも少なくない。筆者が接するクライアントからも、「多額の不動産仲介手数料を支払うのは納得がいかない」という声はよく聞かれる。その理由は簡単で、仲介業者が手数料に見合う仕事をしているとは思えないからだ。

仲介業者の対応に不信感

筆者のもとに来られた方の、具体的な事例を紹介しよう。大手メーカーに勤務する藤田直樹さん(38才・仮名)は、インターネットで自分の希望する条件に近い物件を見つけた。6000万円の都心部中古一戸建だ。物件について問い合わせると、すぐに連絡が来た。若い担当者でノリの軽さが気になるものの、いわく「すでにいくつかお話が入っているが、今ならまだ大丈夫」だという。

物件見学では特段の問題も見当たらず、「前向きに検討します」としてその場をあとにしようとしたところ、担当者に「他にもたくさんの引き合いがあり、早く決めないと売れてしまう可能性が高い」と言われた。しかし、その場で決断はできない。どの程度の自己資金を捻出するか、どの金融機関でいくらの住宅ローンを組むか検討しなければならない。

また、築20年を経過しているため、ホームインスペクション(住宅診断)を入れ「建物に欠陥はないか」「買ったあと、いつ頃、どこにいくらくらいの修繕費がかかりそうか」など把握しておきたい。また、事前に親にもひとこと話をしておきたい。藤田さんがそう思ったのは自然なことだろう。

その旨を仲介業者に伝えると、担当者は「早くしないと売れてしまう」とせかす。その後、上司を連れて担当者は自宅までやってくると、その場で決断を促された。「いま複数の引き合いがあります。いまこの場でご決断いただけるなら藤田さんにお譲りします」という。

しかし、藤田さんとしては、住宅ローンをどれにするかまだ決めていないし、親にも話ができていない。さらには建物のコンディションも気になる。上司いわく「インスペクションを入れるなどとうるさいことを言っていては売ってくれない可能性が高い」という。藤田さんは、売主に交渉もせずそのようなことを言うこの上司に不信感を抱いたこともあって「それなら仕方ありません。あきらめます」として引き取ってもらった。

しかし、1週間経過してもその物件情報はネット上に載ったままだ。さらに1カ月が経過すると、価格がおよそ500万円下がっていた。仲介業者に買うことを急かされたことに藤田さんは不信感を抱いた。しかし、500万円も価格が下がっているとなると予算内に収まるため、購入を考え直す。

藤田さんは再び仲介業者に連絡し、ホームインスペクションは入れずにこの物件を契約した。物件価格の3%+6万円(税別)といった仲介手数料について値引き交渉をしたものの「規定の手数料です」として一蹴された。しかし、担当者の態度は契約が終わると一変した。急に連絡が来なくなり、折り返しの電話も遅く、メールの返信も思い出したように返ってくるだけ。

不動産仲介手数料は物件価格の3%+6万円(税別)と高額で、6000万円の中古一戸建を買った藤田さんは仲介業者に186万円(税別)の仲介手数料を支払っている。しかし、住宅ローンの手続きはすべて自分で済ませ、仲介業者の対応・サービスはその対価にまったく見合っていないと藤田さんは感じた。

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