平壌の住民は、あらゆる物を入手できている スイス援助機関職員がみた「北朝鮮の現実」

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NKニュース:北朝鮮の当局は、公式レートがあるにもかかわらず、あなたが1ユーロ9000ウォンで両替していることについて、どのように説明していますか。

フィスラー:誰も公式レートを利用していません。公式レートはスーパーマーケットでラベルを付けられている物に関係しています。そして、そこには日々のレートが示されています。

たとえば、何らかの商品が、公式レートの表示とともに、100ウォンとラベルで付けられていれば、それはおよそ1ドルです。

それは単に仮定上の数学の演習なのですが、実質的な価値を有しています。たとえば、もし私がドイツ産の果物ジュース1箱を買えば、私はいずれにしても3ユーロを払います。

「2つの為替レート」の恩恵はない

NKニュース:北朝鮮国民は、この2つの為替レートについて何か言っていましたか。

フィスラー:明らかに、彼らはこの2つの為替レートから恩恵を受けてはいない。ウォンで買える所では、(どちらの為替レートを使おうとも)その価格は結局、同じ水準の価格になっています。

一見したところ、興味深い1つの例外があります。多くの人々が2、3台の携帯電話を持っています。なぜなら、彼らは初期の月額使用料が3000ウォンで買うことができるからです。約60分間の無料通話のサービスも付いてきます。1台を使い続けて割高な追加料金を払い続けるより、安い月額使用料を払って2台を使った方が彼らにとって安くつきます。1ドルが8000ウォン程度ですから、3000ウォンは何でもないはずです(訳者注:外国人滞在者はこうした携帯電話は買うことはできない)。

フィスラー:しかし、もし北朝鮮国民がタクシーを使うならば、彼らはユーロかドル、ウォンのいずれかで払います。そして、料金が3ドルとなり、彼らがウォンで払うつもりなら、2万5000ウォンの支払いになることでしょう。(訳者注:非公式レートを1ドル約8300ウォンと計算)

しかし、実際には誰も、(ユーロの)非公式レートが公式レートの70倍に達するというこの種の仮定上の事実からは恩恵を受けていない。

NKニュース:北朝鮮では最近、燃料価格が上昇しました。しかし、タクシーやバスの料金は変わっていないと理解しています。これはどうしてですか。

フィスラー:私が思うに、タクシーは、外国人がガソリンスタントで払う価格とは違った燃料クーポンを入手できています。それが理由に違いありません。

別の要因としては、基本的に私用車はありません。あってもおそらく少数です。政府の一部公用車は、異なった価格の燃料クーポンを入手できます。これも理由の1つです。興味深い点です。

世界のどこでも、燃料価格を80%とか100%上げれば、物価上昇に伴い、大変なインフレーションになるでしょう。ミャンマーでは、それがサフラン革命のきっかけとなりました。(訳者注:サフラン革命とは2007年8月ミャンマー国内で軍事政権に対する大規模抗議運動が発生したこと。燃料価格の急騰を起因とし、学生や反政府活動家によるデモが行われたが、政府軍によりすぐに沈静化された)

しかし、北朝鮮では変化が起きません。

(後編はこちら

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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