「京王ライナー」は対小田急の切り札になるか 激戦区・相模原線は準特急を増発

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座席指定列車導入の動きが近年活発になっている。2008年には東武東上線で同じくロングシート・クロスシートの転換座席タイプの車両を導入して「TJライナー」を運行開始したのをはじめ、昨年には都心を経由して西武秩父と横浜・みなとみらいを結ぶ西武鉄道の「Sトレイン」が話題を呼んだ。西武は新宿線・拝島線にも同様のライナーを導入する予定で、今後も各社間で帰宅時間帯に通勤ライナー導入・拡充の動きは続きそうだ。

京王では座席指定列車の導入に向けた検討を2014年夏から始めた。座席指定列車に充当する車両はイメージを変える新型車両としての役割が期待され、社内でさまざまな議論が重ねられてきた。外観はシャープな印象にし、一目で新型車両だとわかるようにした。車内には京王初の車内における無料無線LAN・空気清浄機・電源コンセントを装備する。「路線長が短く、特急専用車両を導入できるほどではない」(高橋泰三・鉄道事業本部長)という事業環境の中で最大限の工夫を詰め込んだ。車両自体は一足先に運行開始されているが、早速話題となっているようで、「座席指定車両はいつから走るのか」という問い合わせが多いという。

その新型車両で運行する京王ライナーは停車駅でも大きくイメージを変えようとしている。新宿を発車すると京王八王子方面は府中、橋本方面は京王永山が最初の停車駅になる。この停車駅設定について、「他社も最初の停車駅までの距離は20~30km。当社もそれにならった」(高橋本部長)ということだが、路線長が短い京王線で乗降客数が多い明大前駅や調布駅の通過は大胆な設定だ。

多摩センターと永山を巡る争い

今回は夕夜間の通勤ライナーとしての活用だが、「お客様の利用状況を分析し、朝の運行や高尾山口方面への運行も検討する」(同)と将来に向けて含みを持たせた。また、座席は「京王パスポートカード会員」となると、前日からの予約も可能で、ポイントもたまるという囲い込み施策も行っており、関連施策と合わせて京王らしい「足元固め」の施策を感じることができた。

記者会見で京王ライナーの魅力をPR。中央が紅村康社長(撮影:尾形文繁)

先述の通り、京王ライナーと同じく注目されるのは、多摩センターと永山における小田急との乗客争奪戦だ。このエリアでは1974年に京王相模原線が、1975年に小田急多摩線がほぼ同時に開業した。しかし、小田急多摩線の混雑や所要時間の関係から多摩センターでの乗降客数は、1995年時点で京王が約8万2千人/日、小田急が約3万1千人/日と2.5倍以上まで差が開いた。それが現在では多摩センターでは京王が約8万8千人/日、小田急が5万人/日となり、永山でも京王が4万6千人/日、小田急が3万1千人/日と差が詰まってきた。特に小田急多摩センターの乗降客数は20年で約2万人/日近く伸びている。

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