「京王ライナー」は対小田急の切り札になるか 激戦区・相模原線は準特急を増発

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その裏には小田急多摩線のイメージ向上の取り組みがある。元々同路線には遅いというイメージがあったが、2000年にはロマンスカーを、2002年には多摩急行を導入し、都心方面の速達性と快適性を向上させた。2016年のダイヤ改正ではロマンスカーの直通はなくなったものの、千代田線直通急行を大幅に増発した。そして今年3月のダイヤ改正では千代田線直通から新宿直通へと軸足を移し、登戸駅通過の通勤急行を新設する。しかも通勤急行のうち6本は小田急多摩センター始発で運行、7時台発は唐木田始発と合わせると10分に1本の運行となる。小田急は「速くて座れる」と快適な通勤ができることをアピールする。

これに対し、乗降客数でリードしている京王は1992年5月から特急を導入。新宿多摩センターを30分弱で結んでいた。一度特急はなくなるも、所要時間をほぼ変えずに運行を続け、2013年から再び特急・準特急を導入している。今回のダイヤ改正では京王線のネックとなる朝ラッシュ時間帯こそ京王多摩センターから新宿まで50分弱かかるとはいえ、それ以外の時間帯では小田急に比べて所要時間は短くなる。また、3月17日からは京王相模原線の運賃・定期券代も引き下げられる。だが、ある多摩ニュータウン住民は今回のダイヤ改正に関して「朝速くて座れるとなると、多摩センターや永山から乗車する人は小田急にシフトするかもしれない」と言う。

京王沿線の今後は?

京王はこれまでも地域とのつながりを強く意識した施策を打ってきた。そしていま「東京は、美しい」と題したCMや広告掲出といった宣伝活動を行い、沿線内外へ魅力をPRする。これは人口減少社会において「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」となるためのものだ。

多摩センター駅前(筆者撮影)

今回の座席指定列車の導入は京王にとってようやく魅力PRのための駒がそろってきたというところではないだろうか。そして、今後も地道に沿線の魅力を意識し、発展させるさまざまな事業が行われていくであろう。

いま、京王は今後、多摩ニュータウン向けに、買い物難民解消のための移動販売車の増車や空き家活用事業を進めるという。また、今回のダイヤ改正に合わせて、京王バスのダイヤも若干改正するという。

両社のダイヤ改正や新規施策によって、多摩センターや永山だけではなく稲城・若葉台周辺の開発地や多摩センター以西のまちづくり・住民の動きも変化するかもしれない。両社の動きとともに地元の動きからも目が離せない。まずは、定期券買い替えシーズン直前のダイヤ改正で人々の流れがどう変わるか、新ダイヤで京王がイメージを刷新できるのかに注目したい。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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