残念なリーダーがやりがちな「自分語り」の罠

相手目線で話さなければただの自慢か昔話だ

こうやって考えると、Mさんとしてもいろいろ思い当たることがあります。メンバーからの話をよく聞いていたつもりですが、その後の結論はいつも自分が話していた気がします。メンバーはみんなよく話を聞いてくれるので、自分ばかりが気分よく話していたという自覚があります。自分が持っているものを伝えたいという思いが強く、相手の考えていることや持っているものが何かということを聞く姿勢に欠けていたのです。

結局は相手の状況を考えずに、独りよがりで自分の経験談を語っていたため、時としてそれが相手には受け入れづらいものだったということがわかりました。

その後Mさんは、もちろんメンバーを指導、育成する熱心さは変わりませんが、メンバーからの目線ということを、より一層意識するようになりました。自分の経験や体験を語りますが、あくまでそれは参考として、問題の解決策や仕事の進め方はメンバーと話し合って、必ず本人に答えを出させるようにしました。アドバイスをしたり選択肢を示したりはしますが、その結論はすべてメンバー自身に考えさせるようにしたのです。

すると、確かに時間がかかったり、考えた方法がうまくいかなかったりしますが、それまであったようなメンバーからの物足りない反応はなくなっていきました。また、いい意味でMさんの予想を裏切る結果になることもあり、Mさん自身が学ぶこともありました。メンバーが自ら動こうとすることが増え、チームの空気はどんどんよくなってきているという実感が持てるようになってきたのです。

過去の経験談や苦労話は「相手目線」で話すのが効果的

Mさんのように、自分の経験を下の世代に伝え、今の仕事に活かしていくことはとても大切なことですが、注意しなければならないこともたくさんあります。まず、今の若いメンバーは、確かに他人の経験や体験などの事例のような話は真面目によく聞きますが、それが果たして自分とマッチすることなのか、活用することができるのかという、自分のリアルな状況との重なりを常に意識しています。

多くの情報に囲まれ、それを取捨選択することが当たり前の環境を育ってきた若いメンバーにとって、自分の等身大ではない経験談や苦労話は「私とは違う」となってしまい、必ずしも共感はしていません。自分の経験、体験は、それを相手の立場、能力、実情などに合わせて語ることが必要になっています。

また、自分の経験や苦労を語る時、それがいつの間にか自慢話になっていたり、選択肢を排除するような相手への押し付けになっていたり、内容のよし悪しというより、話す姿勢や態度によって相手が受け入れにくいものになっていることがあります。ここでもやはり“相手目線”が必要になります。

最後に「自分たちもそうだった」「昔も同じだった」というような言い方で、自分と相手との同一性を求め、その結論を知っているのは自分だとばかりに、自らの経験や体験を話す人がいますが、それが本当に同じなのかどうかは相手が決めることです。この変化が激しい時代では、過去の経験が単純に活かせる場面はどんどん少なくなってきているのが実情です。

人の経験談や体験談は、確かに具体的で参考になるものですが、ともすれば一方的な話になってしまいがちです。すべてが過去と同じ状況になることはありませんし、相手にとって等身大と思える経験談でなければ、その人がその話を活かしていくことはできません。

リーダーとして、自分の経験を伝えようとする時には、決して独りよがりにならず、“相手目線”を意識しなければなりません。そうでなければ、経験談や体験談はただの昔話か自慢話になってしまいます。過去に経験、体験してきたことは、その人の大切な財産です。それを有意義に活かすためにも、リーダーは常に“相手目線”を意識して話すことを心がけましょう。

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