残念なリーダーがやりがちな「自分語り」の罠 相手目線で話さなければただの自慢か昔話だ

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ただ、そんな中でもMさんは、時々メンバーの反応が物足りないと思うことがあります。ひと言でいえば「腹落ちしていない」という状態です。メンバーに理解できないこと、納得できないことを聞きながら、できるだけ自分の具体的な体験から語りかけますが、その時の反応の鈍さは変わらず、話せば話すほど逆効果になっていると感じることさえあります。そういうことができるだけ少なくなるように、Mさんなりにメンバーとの接し方をいろいろ考えていますが、なかなか思うようにいっていないのが実情です。

そんな中、仕事でミスをしてしまったあるメンバーを指導している時に、こんなことがありました。わりと早い段階で見つかったミスだったため、それほど大きな問題にはなりませんでしたが、落ち込んでいるこのメンバーを励まそうと思い、「自分にもそんなことがあった」「失敗は誰にでもあるもの」と語りかけ、「その時は自分もずいぶん落ち込んだけど、その後注意するきっかけになった」「自分の経験では、こういうやり方をすればミスは防げる」などといって、実際にやり方も見せようとしました。しかし、このメンバーの反応は薄く、あまり納得している感じではありません。

Mさんは指導やアドバイスをいろいろ続けましたが、最後にこのメンバーがMさんに対して言ったのは、「聞いていても自分にできることと思えない」ということでした。

一生懸命教えているつもりのMさんからすれば、少しショックな言葉でしたが、気を取り直して話の続きを聞いてみると、「Mさんの経験ではそうなのかもしれないが、自分はそんなに能力がないし、経験してきたことも違う」「具体的なやり方を言われるが、それでは古いと思ってしまうことがある」「いい方法と思っても、時間がなかったり、今までのやり方と違いすぎたりしていて、実行できないことがある」などと言ってきます。

要は「結局それは他人の経験談であり、自分に当てはまるとは思えない」ということです。自分ではよかれと思っていたことが、メンバーからは必ずしも共感されておらず、受け入れられていないことがあるとわかり、Mさんは考え込んでしまいました。

部下にとっては抽象的だった

この話をきっかけに、Mさんはあらためて自分がやってきたメンバー育成の方法を、一から考え直そうとします。まず、自分の経験談や失敗体験をもとに、細かく具体的に指導やアドバイスすることについては、メンバーの反応もそれなりによく、全体としては受け入れられていました。ただ、時には自分から見ても物足りない反応だったことがあるのは確かです。その後、メンバーの何人かに話を聞くと、「決してすべてがそうではない」と前置きされたうえで、こんな話が出てきました。

「自分と重ねてみた時にリアルだと思えない」

「経験や苦労話は参考にはなるけれど、自分とは違うと思ってしまう」

「古いやり方を押し付けられているように感じてしまうことがある」

「それはMさんだからできることと思ってしまうことがある」

ここでMさんが気づいたのは、自分のやってきたことは、すべてが“自分目線”から始まっていて、“相手目線”への配慮がされていないということでした。「“自分では”よかれと思って」「“自分にとって”具体的に」「“自分が”経験してきたことを」「“自分が”よいと思う方法で」という形で指導やアドバイスをしていたのです。

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