ありえない問題続く「サウジ砂漠鉄道」の悪夢 安価で受注したスペイン連合の悲哀

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一方、サウディ・オジェール社は、レバノンの元首相で、2005年に暗殺されたラフィーク・ハリリがレバノンで建設事業を始めた後に、フランスのオジェール社と合弁で、サウジで建設事業を展開させたのが始まりである。その後、ハリリはオジェール社を買収してサウジでゼネコンの大手企業として発展させた。ちなみに、ハリリの息子、サード・ハリリが後継者で、同氏は現在、レバノンの首相を務めている。

サウジ高速列車は現在、金曜日と土曜日は広報の目的も兼ねて、乗客を招待し、試乗を行っている。というのも、開通した暁にはより多くの乗客を集めたいと考えているからだ。

利用者数は当初予想の3分の1に…

そもそも、このプロジェクトをスペインのコンソーシアムが受注した時には、年間の利用客は6000万人以上になると見込まれていた。しかも、新幹線並みの4分間隔の発車が計画されていたほどである(余談ながら、このような超過密ダイヤを仕切れるのは日本しかない。スペインでも高速列車はほぼ30分間隔である)。

しかし、世界的な不況やテロ懸念、サウジとカタールとの断交などもあって、今では年間の利用客は2000万人くらいが見込まれているという。当初から見て3分の1にまで減少しているのだ。

コンソーシアムの中で、利用客の減少の影響を最も受けるのはスペイン国営鉄道(Renfe)である。同社は営業開始から7年間売り上げの一部を報酬として受け取ることになっており、その後も5年の契約延長も認められている。売り上げが伸びなければ、報酬は期待できなくなる。

また、原油価格の下落に伴ってサウジの財政事情が悪化し、コンソーシアムへの支払いも遅延ぎみになっていた。現時点ではこれまでの未払い金は完済しているというが、コンソーシアム側は受注するために当初工事を安く見積もって応札しており、最終的には当初の見積もりを15億ユーロ(1950億円)ほど上回る金額になる見込みだ。

サウジ鉄道公社では約束どおり昨年末までに列車を走行させたことへの報酬として、コンソーシアムに1億5000ユーロ(195億円)のボーナスと、予想外の出費を補填する意味で2億ユーロ(260億円)を提供することになっている。しかし、それでもこの難工事の赤字を補填するには至らなそうである。こうした事情から、今回の受注はコンソーシアムにとって採算の取れないプロジェクトだったという結論に終わりそうだ。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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