三江線廃止後の標的?「木次線」の生き残り策 ワイン列車不調にめげず女子旅列車で大逆転

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しかし、今回は地域と木次鉄道部の丁寧で粘り強い交渉の成果で、日本初となるカーペット敷きカフェトレインが実現した。

観光プログラムは扇子の文字入れ体験だった(筆者撮影)

ワイントレインの頃の木次鉄道部は頑な印象だったけれど、今回は木次鉄道部長も同行し、女性社員も手伝っていた。ロングシートのソファに鎮座し、参加者にかわいがられていた大きなぬいぐるみは、なんと、木次鉄道部長宅の私物だったそうだ。

第4の理由は、「JR西日本では、こんなにおもしろい企画列車を作れる」という事例ができたこと。木次鉄道部長は「団体貸し切り扱いだし、内部がどうであろうと、安全に利用していただけるなら問題ない」という。これは木次線沿線以外の自治体も、路線活性化の参考となる事例となった。

観光列車は地域活性化の手段

初心に立ち戻り、木次線の観光列車が走る理由は何だったか。観光列車で儲けよう。地域を活性化しよう、ではない。本来の目的は、木次線を廃線の危機にさらさないため。つまり、観光列車は目的ではなく、木次線存続、活性化の手段だ。そのシンボルとして観光列車を作り、地域の関心を高めていく。

その意味で「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」は成功だった。ワイントレインにくじけず、次の手を打った雲南市と奥出雲町も粋だ。

取材の帰り、ある職員が私に言った。

「また何かやりますから、来てくださいね」

次の知らせが楽しみで仕方ない。2018年も、引き続き木次線、そしてローカル線と関わる地域の取り組みに注目していきたい。

杉山 淳一 フリーライター

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すぎやま じゅんいち / Junichi Sugiyama

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴40年超。全国の鉄道路線完乗を目指してコツコツと旅を重ねている。鉄旅オブザイヤー選考委員。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

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